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【エッセイ】こたつの上のシンクロニシティ
あの日私は、長い新幹線での一人時間のために買った本を手にしていた。静かな一人旅にふさわしいモノクロの表紙。白いものについて書かれた言葉たち。ノーベル賞をとった人の短編集の文庫本。でも移り変わる新幹線の外の景色を見ていると時間はどんどん過ぎてゆき、ほんの少ししか読むことができなかった。
あの日 文学フリマの私のブースの左隣は若い男性が本を売っていた。時折彼のファンらしい若い女の子や様々な年代の男性などが訪れると、彼は彼の本について説明を始める。 それは横にいる私の耳に聞くともなしに入ってくる。 誕生日について生まれたことについて彼は語っている。説明を聴き終えた人は彼の本を購入し去っていく。
自分のブース以外のどこでも何も買わなかった私はただ一冊、彼の本を買った。彼が2冊の本を売っているうち、私はどちらを買うのが良いか尋ね、勧められた本を買った。帰りの新幹線で読もうと思う、と彼に告げ、帰りの新幹線で約束した通り彼の本を開く。 一番最初の短い話を一つ 読んだ。書かれている景色が浮かぶ。自分の思い出 みたいに 淡い色で過去に浮かぶ。
やはり 帰りの新幹線でもあまり本は読めなかった。疲れ果てていた。
そして今日。あの日から1週間以上経った今日、その二冊の本をこたつの上に置いてかわるがわる読む。
白いものについて書かれたページを何ページも繰る。
白いものに少し埋もれすぎてしまい本を閉じ、横に置いた彼の本を開く。 ポケモンが出てくる短編を、息子や息子と一緒にやった、または最後には一人でやっていたポケモンゲームを思い出しながら読み終える。次はどれを読もうと本をパラパラ させ、パッと開いたページに、さっきまで読んでいた白い本の一節が引用されているのを目にする。
シンクロニシティ。私のこたつの上でのこの小さな シンクロニシティを書き留めておきたくて今日は休もうと思ったnoteにそのことを話しかける。話しかけているというのは スマホに音声入力でこれを書いてみているからだ。 シンクロニシティを誰かに話せることはちょっと嬉しいと言うか 話したくなってしまうから…。
さあ、句読点を入れて投稿しよう。こたつから出てパソコンのところまで行こう。ほんの一メートルだ。
*お隣ブースだった垂井さん