薔薇の花びらの衣装をつけて
花で出来た衣装をつけて舞台に立ちませんか?
え?と振り返るともう私は
薔薇色の花びらをたくさん重ねた衣装を身にまとい
ステージの上だった
待って、踊ったことなんてない!
ライトに照らされる前に叫ぶ
大丈夫ですよ、この赤い靴をはけば。
え?赤い靴?踊るのを止められなくなって
足を切り落とさなくてはいけないんでしょ?
そんなことありませんよ、さあどうぞ。
軽い赤いバレエシューズがもう足を踊らせる
かたいはずの身体もしなやかに動く
腕も勝手に空中に弧を描く
さあ薔薇の花の踊りを
薔薇の花が散る前の踊りを
華やかで寂しい踊りを
誰もみてくれない孤独な踊りを
さあ。
最後の踊りは雨と風の中で
寂しく冷え冷えと終わった
もう花びらの衣装は着ていない自分を見てホッとする
でも。
でも赤い靴は軽やかに
私をどこかに連れて行こうとする
どこに行くの?
靴に訊ねる。
どこか。どこか。
舞台の上ではない、どこか。
楽に呼吸が出来る、どこか。
*スタエフで朗読しました。
「靴」の発音が静岡県民的です(;´・ω・)