【詩のような短編】私だけの小川
渡された、なんでもない言葉が胸に重くなって
どうしてこんなに重いんだろう?と考えるともっと重くなって
とうとうしゃがみ込んでしまう
目を閉じる
何も見えない
今は冬だけど
五月闇が見えていたのかもしれない
あきらめて目を開ける
目の前に美しい白い足
見上げると光のような人、きっと女神様
「さあ立って。あなたに小川をあげるから」
「小川?」
「ええ、あなただけの小川。
いつもあなたの足元にある小川。
そこに何でも流していいのよ。
あなたも流れていっても良い」
そういうと美しい人は消え
立ち上がった私の足元には小川がさらさら流れていた
私はさっき胸を重くした言葉をそこに流した
もう何か月も胸を重くしていた言葉も流した
子どもの頃からこびりついていた言葉も流した
捨てるように流してしまっていいのだろうか?
いいわよ、と小川はさらさら流れ続ける
桜の花びらが流れてくる
ほら、こんなふうに花びらになるから
紅葉になるから
真っ赤な紅葉が流れてきて
すぐに遠くに流れていって見えなくなった
それ以来、私の心は重くならない
足元には私だけの小川があるから
だれにも見えないけれど
いつもある小川
いつかそこに流されていこう