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『よるの童話』

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心のどこかが疲れた大人(ミモザ)による 同じようにどこかが疲れた大人のための物語集です。
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2025年2月の記事一覧

【短編】”夢のかなう綿菓子”シロクマ文芸部

「甘いものでも買いなさい」 さっき実家を出るときに80代の母が50代の私にそういって五千円札を渡してきた。桜柄の可愛い封筒に入っている。 「お母さん!50代にもなってお小遣いなんて要らないから。ダイエット中だから甘いものも無理!」 「まあいいじゃないの」 母の笑顔に押し切られ、受け取ってしまった五千円。 それを入れた手提げバッグを持ち、私はまだ枝だけの桜並木の道を自分の家に向かって歩いていた。 「甘い甘い、虹色の綿菓子はいかがです?夢がかなう綿菓子ですよ~」 道を歩いていた