【短編】”夢のかなう綿菓子”シロクマ文芸部
「甘いものでも買いなさい」
さっき実家を出るときに80代の母が50代の私にそういって五千円札を渡してきた。桜柄の可愛い封筒に入っている。
「お母さん!50代にもなってお小遣いなんて要らないから。ダイエット中だから甘いものも無理!」
「まあいいじゃないの」
母の笑顔に押し切られ、受け取ってしまった五千円。
それを入れた手提げバッグを持ち、私はまだ枝だけの桜並木の道を自分の家に向かって歩いていた。
「甘い甘い、虹色の綿菓子はいかがです?夢がかなう綿菓子ですよ~」
道を歩いていた