シェア
花の終わった葉桜の公園で、私は子供を砂場で遊ばせ、ベンチでまどろんでいた。とても疲れていた。うとうと、うとうとしていると公園の横の細い道路をゆっくりと走る、通りすがりの移動販売車が品物を宣伝する声が耳に入る。まるで夢の中から聞こえてくるように。 「羽、羽、羽はいかがですか?あなたはどんな羽が欲しいですか?」可愛らしい声が客を呼んでいる。私はまどろみの中から、ああ羽、ほしいなあ、と思う。 「美しく優雅な蝶の羽、ピンと速いトンボの羽、水玉が可愛いテントウムシの羽、美しい歌を奏でる
静かな雨の日は一人で歩いているのにちょうどいい。晴れた日だと一人で歩いているのが少しきまりがわるいと沙和は思う。転校してきたばかりだからまだ帰り道はいつも一人だ。 引っ越した時に買った新しい鶯色の傘に雨があたるパラパラという音が心地いい。だんだん楽しくなってくる。どこかで雨蛙がけろけろと鳴いている。沙和は、けろけろ、と心の中でつぶやく。ますます楽しくなる。 もう少しで家に着く。目印の、神社の横の古い公民館の、その隣の家の生け垣から、赤い薔薇が道の方に飛び出すようにして咲いて