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吉田修一『ぼくたちがコロナを知らなかったころ』集英社文庫

吉田修一は全日空の機内誌に長いこと連載していたらしい。最近は飛行機に乗ることがまったくなかったから知らなかった。これはその連載が本になったもの。

小説しか読んだことがなかった作家がどんなエッセイを書くのか、興味があったのだけど、拍子抜けするぐらい明るい文章だった。あんなに深刻な小説を書く人なのに。まぁ飛行機の機内誌だから暗い話は似合わないよね…。それと、取材のためもあるのかもしれないが、けっこう贅沢なことをしてらっしゃるのだなぁと、これも小説の雰囲気と違っていて意外だった。

機内誌だからハワイの話も出る。ハワイにはいろんな島があるが、オアフ島のワイキキ(ハワイの玄関みたいなところだ)はハワイ初心者をおおらかに受け入れてくれるところだという話。たしかにそうなんだよね。すごく俗っぽい場所だけど、誰でも「知らない国に来た」という気おくれを感じないで過ごせる場所なのだ。わたしも案外ワイキキが好き。

居酒屋について、「鼻が利く」人がいるというのも納得だった。その人がいると、「面倒だからそのへんのところにテキトーに入ろう」ではなく、必ずおいしい店に連れていってもらえる。そういう人がいるものだ。そして、そういう人はなぜか早足である。これも同感。

長い時間をかけて頑張っていた仕事がやっと終わったとき、それまでは「あれをやろう」などと楽しみにしていたくせに、いざその仕事が終わってしまうと案外ポカーンとして、「大してやりたくない」のだ。これもあるある。

あとはTVの「猫メンタリー」に登場した猫の金ちゃん、銀ちゃんの話。TVではクールに見えた吉田さんなのに、この本では猫にベタベタなのも意外でした。


(写真はイギリスで買ったピルケース。蓋にネズミがいる方のは、中に小さい絵が描いている。)

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