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上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』書肆侃々房
自分の性格からして俳句ではなく短歌である。辛抱が足らないので、俳句のように絞り切れないのだ。リタイアしたら(いつ?)短歌を勉強したいかもしれない。
で、このインパクトの強い題名の歌集である。なんとなく作者は中年かと思ったのだが、若い人のようだ。「新鋭短歌」という企画があって、30首あれば応募でき、選ばれたら出版してもらえるらしい。素晴らしい企画である。
いいなと思ったものを書き抜きます。後半、作者は恋をしてけっこう幸せそうで、俵万智風のが多くなる。ひねくれているわたしは幸せな歌にはあまり魅力を感じないので、どうしても前半の苦い感じのものが多くなった。
・いつどこの街に行っても「はまゆう」って名前のスナックある 怖い
・市営団地へ向かう風 軽トラの荷台に荷物わたし荷物 荷物
・それっぽい土手とかないしサンクスの駐車場でいろいろを誓う
・下半身から血が出る日にもおにぎりを握り続ける母という人
・家を出る日の朝 それでも豆苗は事情を知らず伸び続けてた
・アマゾンで激安だったツナ缶のマグロは海を覚えてるかな
・あまりにもからだがきれいで長いので振り返ることできない太刀魚
・ふたりふたりみんなふたりのサイゼリヤ舞踏会はきっとこれから
・千切られたポン・デ・リングが惑星となって周りだす 始発が近づく