平松洋子『おんなのひとりごはん』筑摩書房
平松さんの料理エッセイ。じゃなくてこれは一応、小説だ。短編小説集である。「一応」と断ったのは、小説の体をした料理エッセイとしか思えないから。どの話も登場人物はそれぞれ違うし、違う名前もついているけれど、少しも小説らしい手ごたえがない。料理について、食べ物屋についての蘊蓄も、いつもの平松さんのままだ。そういえば巻末にはお勧めの店がリストになっているから、小説の体をしたガイドブックということか。その中途半端さが個人的には残念な本だった。
料理や料理屋を登場させる小説というアイディアは面白いのだ。でも平松さんには残念ながら小説の才能はないみたい。ひょっとして、この本(2009年刊)のアイディアをもっと小説らしく膨らませたのが原田ひ香の『ランチ酒』シリーズなのかしらん。あちらの方が料理小説としては成功していると思う。なんだかまた原田ひ香の本を読みたくなったな。
さて、平松さんの本だが、「天ぷら」の話では、26歳のOLがふらっと入った店で値段も確認せずにランチの天ぷらコースを頼むが、たいへんおいしかったので後で7000円だと知っても満足だったというのだが、それはないでしょー!とあたしは心の中でさけびましたよ、平松さん。