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村上春樹『カンガルー日和』講談社文庫

どうも最近調子が悪い。読書の方の調子である。忙しいというわけもないのだが、読みたいという気持ちがあんまり起きない。そんなときに、以前からその名前だけでなんとなく敬遠していた作家「ピンチョン」の本をたまたま手に取り、読み始めたが、恐れていたとおり面白いと思えずに半分で放り投げた。どうもスランプだ。

こんなときはあんまり考えなくてもスラスラと入ってくる本を読みましょう。ということで、この本。わたしの<意外と読んでいなかった初期村上春樹を読もう>シリーズである。フラッシュ・フィクションのような超短編を集めたもの。同じ趣向として『夜のくもざる』があるけれど、デビュー後まもなく書かれたこの『カンガルー』はもっと初期らしい、あまり安定していない、やや稚拙な書きぶりだ。(「ホール・サイズのケーキ」を「フォール・サイズのケーキ」と書いてあったりする。)

ひとりの作家に惚れ込んだ人にとっては、その作家らしさが出ている作品はたとえ駄作でも嬉しいものだが、わたしは村上春樹にそれほど惚れ込んでいないので、「あら、ちょっと下手」と思うだけである。それでも期待どおりにスラスラと入ってきて、本を読めない焦りから救ってくれた。ありがとう、村上さん。それに最後の「図書館奇譚」(奥さんのリクエストで書いたらしい)などは精神分析的に読むと面白い解釈ができそうで、わりと興味深かったのである。

たぶん6月が無事に終わればもっと楽しく本が読めるんじゃないかなぁ。そうなりますように。


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