江戸川乱歩『幽霊塔』春陽堂
なんでまた江戸川乱歩なのか。というと理由は簡単で、先日『君たちはどう生きるか』を見たから。そして(わたしは特に宮崎駿ファンでもなく、ジブリ映画もあまり見たことがないのに)ツイッターで宮崎作品には不気味な塔がよく出るが、それはこの乱歩の『幽霊塔』がインスピレーション源との情報があったから。それでちょっと興味が湧き、乱歩のはたぶん短編だろうから読んでみようと思ったわけです。もともと乱歩は嫌いではないのだ。
図書館で借りてきたら、意外にも短編ではなく長編小説だった。でもスイスイと読み進んであっさり読了。いちおう推理小説のかたちを取っているので内容は書かないが、いかにも乱歩らしいチープなおどろおどろしさ。もちろん、凄いほどの美女が出る。わかりやすく煽情的。乱歩の小説はどれも、絵に喩えたら毒々しい原色で塗りつくされている感じで、大正時代の日本の明るいだけではない別の面が感じられて面白い。
ところで塔というのは、乱歩に限らずなぜか人の気持ちを惹きつけるものだ。男根的だから? 天に近づきたいという人間の根源的な欲望だから? でも文学に描かれる塔はたいていの場合、近寄りがたく、中身がよくわからなくて不気味なのである。
後書きによれば、イギリスにネタ本があり、それを黒岩涙香がまず翻案し、それをさらに江戸川乱歩が書き直したらしい。イギリスもこの時代はセンセーション・ノベルが大流行していたのだった。