星野源『そして生活はつづく』文春文庫
最近の芸能界にまったく疎いわたしだが、この人の名前ぐらいは知っていた。どなたかがnoteでこの人の文章を褒めていたので、どんなものかと読んでみたのである。この人の最初のエッセイ本らしい。日々の生活の合間に書いた感じがよく出ていて、若者らしいエネルギーが(一見あまりないようで)とてもある。
お腹の問題を抱えているらしい彼が、たとえば全裸で舞台で演じなくてはならなかった話など、ハラハラしてしまった。また、人づきあいが得意でなく、ひとりでポツンといることをまわりから批判されて驚いたり、自分の容貌の冴えなさを嘆いたり、いまの人気から考えると意外な素顔が見える。小学校でいじめられていた彼を見守っていたユーモアあふれるお母さんや、やさしいおじいさんの話も印象的だった。
クスクス笑えるエッセイなのだが、実はとても強い芯があって、笑いを取ることだけで終わっていない。たとえば、どんなに誰かの熱烈なファンであっても、そのすべてが本当に気に入っているわけではないはずだから、自分に嘘をついてはいけないという話など、まわりに流されて生きたりしない強さを感じた。「孤独」などという気取った言葉はどこにも出ていないけれど、孤独でありつづける勇気を持っている人だと思った。
(うちの古いものシリーズ。見てもたぶん何なのかわからないだろうけど、これは「シェフィールド」というイギリスの古い銀のボトル立て。磨いていないので酸化して真っ黒で恥ずかしい。)
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