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あれはカスハラだったのか…/「ブラック霞が関」を読んで

厚生労働省出身の千正さんが書かれた「ブラック霞が関」。
仕事でご一緒したことはありませんが、省庁の働き方をなんとかしようと活動されている偉大な先輩。
やっと図書館の順番がまわってきました(買えよ💦)。


私は、厚生労働省は日本一のブラック企業だと思っています。
もちろん良い面もありました。
頭の切れ方が一味も二味も違う、どこまで見てどこまで考えているの!?と驚くような先輩や同期、後輩と出会うことができました。
こんなに日本のことを考えてくれている、この人たちが汗水流して施策を作っているなら、大丈夫だと思いました。

でも、私は退職しました。
あそこは、体力と精神力が超人的な人でないと生き残っていけない場所です。
私は体力もおそらく少ない方ですし、メンタルなんてよわよわすぎて、厚生労働省という看板を背負うことのプレッシャーを無意識のうちにずっと感じていたと思います。

おかげさまで今は、たくさん眠れるし、自由に行動できるし、生活こそ当時ほどは保障されていないけれど、恵まれた生活をしていると感じています。


千正さんが訴えているのは、官僚たちに本来の仕事をさせてあげてほしい、そのための環境を作ってあげてほしい、そうしないと日本が危機なのだということです。
私にもその実感があります。現場は本当に仕事がまわっていません。最低限やらなければいけない仕事が山のようにあるので、+αの仕事や気配りができていない部署がそこここにあります。

私が課題に感じていたのは、委託事業や研究など、外部の人たちに業務をお任せするものについてです。
国のお金をつかって、国の代わりに必要な業務をやってもらうのに、国の役に立つものにするために軌道修正などをする担当者があまりに少ない。
おそらく、そこまで手がまわっていなかったり、他の人がやっていないからその必要性を感じていなかったりするのだと思います。
でも、何百、何千万ものお金を費やしてやってもらうのだから、国民に還元できるものにしなければもったいなさすぎると思います。だったらやらない方がまだまし、ただのアリバイ作り(やっている体を維持する)のために大切なお金を使うなんて言語同断です。

でも、本当にそこまでの余裕がないんです。
毎日深夜まで働いているのに、誰からも求められも責められもしないものをもっとよくしようなんてする余裕、ほとんどの官僚にはないんです。
メディアで我が物顔で厚生労働省を批判しているコメンテーターの方には、「厚生労働省けしからん」と言う前に、そういう実態を知ろうとしてほしい、と心から思います。


そうそう、カスハラの話でした。
若手の第一優先の仕事は、電話対応です。
関係者からの問い合わせもありますが、部署によっては一般の方からのご意見、クレームが本当に多い。
私も何度心が折れそうになったかわかりません。
千正さんの本では、それを「カスハラ」と表現されていて、あぁ、あれはカスハラだったのか…と、なんだか肩の力が抜けました。

今までカスハラって、コンビニとか、物流とか、自分とは直接関係のない分野のことだと思っていました。
もちろん、カスハラ自体への問題意識はありました。
自分がコンビニの店員をやっていて、土下座しろと言われたところを想像したら、もう心のなかがぐちゃぐちゃ。しばらく立ち直れないかもしれないと思いますし、そんなことはあってはならないと思います。

でも、当時受けていた電話、何も悪いことをしていないのに、人格から否定されるような、心無い言葉をあびせられて、でも反論も切電もできない、あれは「カスハラ」だったのだと思うと、あぁ、理不尽なことをされていたのだと思っていいのだという安心感というか…。
なんだかほっとしました。

それまでは我慢するのが当たり前だと思っていたものが、言葉にしてもらうことによって、あれは理不尽だと思っていいんだと、違う角度から見ることができるというのは、とても大きなことだと思いました。
私にとっては過去のことですが、官僚時代のつらかったことをあげろと言われたら、やっぱり5本の指には入ってくるような経験ですし、きっと忘れることはありません。
そうした記憶が、新しい考え方や言葉によって、見方が変わって、少し受け止めやすくなるというのは、ありがたいことだと思います。


千正さんの本には、もっともっと過酷な官僚の実態が書かれていました。
過酷すぎる労働環境によって休職に追い込まれる超優秀な人材たち、家庭を犠牲にしなければ成り立たない仕事、流産、若手の離職、などなど。
どれもこれも、あぁそうだったなぁと、当時の職場が思い浮かぶような、厚生労働省にいたらきっと誰もが見たことのある光景ばかり。
テレビで「厚生労働省」と聞くのとはまったく違う、あがきもがいている官僚たちの姿が垣間見れると思います。
官僚も同じ人間、働きすぎたら疲れるし、ほめてもらえたら嬉しい。
そうした面も、もっともっと多くの方に知ってもらいたいと思います。

とっても読みやすくて今の日本の危機を身近に感じられる本なので、もしよかったら読んでみてほしいです。

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