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【椎葉ラボ講座レポート】地方でプロジェクトを進めるための、お金と戦略の話
「好きなあの人に告白しておけばよかった」
「あの大会にエントリーしておけばよかった」
そんな後悔が、皆さんにも1つや2つあるのではないでしょうか。
長い人生、ちょっとした勇気やチャレンジがあればまた違うものになりそうです。
というわけで、そんな勇気やチャレンジ精神をもって椎葉村でプロジェクトを進める方を応援する取り組みが『椎葉ラボ』です。
当社では、椎葉村役場から委託を受けて椎葉ラボの企画運営を行っています。
今回は、椎葉ラボのプロジェクトオーナーを対象に開催した2回の講座の様子を紹介します!
「スモールビジネスのためのマネー講座」
講師紹介
上野諒 合同会社ミミスマス代表社員
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1989年宮崎市生まれ。宮崎県椎葉村在住。
政府系金融機関で法人融資業務を5年間経験。その後、椎葉村に地域おこし協力隊として移住し、農業研修や企業誘致に携わる。
2020年に合同会社ミミスマスを設立し、行政との官民連携事業や自社での釜炒り茶販売事業などを行う。2023年には椎葉村複業協同組合【KATERI WORK】を設立。両団体の代表を務める。
講座の内容
冒頭では、そもそもスモールビジネスとは何か、スタートアップとどう違うのかについて説明がありました。
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上野さん
「よく聞くカッコいい言葉で「スタートアップ」という言葉がありますけど、これはいわゆるITベンチャーみたいな感じですね。赤字をガンガン掘りながら規模を大きくして、途中からガーンと利益が上がるJカーブといわれるイメージ。
もうひとつの「スモールビジネス」というのは、私もそうですしプロジェクトオーナーの皆さんもそうですね。小さく利益を積み重ねながらじわじわと成長する右肩上がりのグラフが特徴です。まあ実際はこんなキレイな直線を描くことはないですけど…笑」
そのうえで、スモールビジネスに取り組むための資金面に関する3つのポイントについて、それぞれ説明がありました。
①儲けとは何か
「儲け」「利益」と一言でいっても、実は様々な受け取り方があります。事業をしていくうえで、自分が目指す「儲け」とは何かをしっかりと確認することが大切だということでした。
経営をしていくには避けては通れないですね...
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上野さん
「立場によって特に扱いが変わるのは人件費です。個人事業主だと自分の人件費は利益の中に入りますけど、法人の場合はスタッフに給与を支払うので人件費が費用の中に入ります。こんな風に、同じ言葉でも人によって受け止め方が違うことがあるんですね。なのでまわりの方と話すときも、このあたりの目線合わせは丁寧にした方がいいと思います」
②リスクが上がる要因は何か
リスクが上がる要因として、在庫が発生するか、許認可が必要かどうかなど具体的な例を挙げての説明がありました。
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上野さん
「スモールビジネスは、とにかく不安要素を潰して低リスクで始めましょう。とはいえリスクゼロだと何もできないので、成長しながら背負えるリスクを大きくしていくことが大事です」
③お金の調達のはなし
自身が銀行員としてお金を貸し出す側だった経験をもとに、資金調達についての話がありました。
事業の資金繰りをするうえでは資金調達が必要になる場合がありますが、このときに気をつけるべき点について説明がありました。
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上野さん
「仮にみなさんが人からお金を貸して欲しいと頼まれたとき、気になるのは「なんに使うのか?」「返せるのか?」ということだと思います。銀行員が見ているのも基本は同じで、この2点だけです。資金調達をするときは、この2点をきちんと整理して人に伝えられるようにしましょう」
以上の3点を軸に、参加者と対話をしながら講座が進められました。
参加者の皆さんも初めて知ったことが多く、真剣に受講されていました。
参加者の声
参加したオーナーの皆さんからは、
「リスクを減らす方法や目的について体系的に理解できた」
「お金のことをあまり考えずにこれまで事業をしてきたが、もっと早くこの話を聞けたらよかった」
「儲けについて理解できたことで事業実施のモチベーションが上がった」
といった声があがりました。
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「ローカルだから売れる時代へ」
講師紹介
椎葉昌史 株式会社菓te-ri 代表
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1982年、宮崎県椎葉村生まれ。椎葉村在住。30歳で地元への貢献をしたいと思い帰郷。近隣の生産者を助けたいという思いから開発した「宮崎バターサンド」が大きな注目を集め、受賞、メディア掲載ともに多数。「地域と農業を未来へ継承する」を軸に活躍中。
主な受賞歴
第8回チームシェフコンクール最高賞
第10回チームシェフコンクール最高賞
令和2年 優良ふるさと中央食品コンクール 農林水産大臣賞
MIYAZAKI FOOD AWARD 2021最優秀賞 など
講座の内容
本講座では、商品開発のプロセスや商品コンセプト、発売後の取り組みといった商品開発の一連の流れについて、講師自身の経験をもとにしたノウハウの共有が行われました。
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昌史さんは商品コンセプトとして、次の3つを挙げられました。
①「宮崎県」の農産物を全国にPRする
出身地である宮崎県の農産物を利用することで、農業にもいい効果が生じる。また、地域の人に応援してもらえるようになるということです。
自分自身のモチベーションにもつながりますね!
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②三方良しの持続可能なシステムづくり
お客様・生産者・製造者の三方が満足できる循環がうまれることで、サステナブルに商品を販売できるようになるという説明がありました。
多様な視点をもって経営することが大切なんですね。
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③受注生産することで廃棄ロスゼロ
受注生産や冷凍技術を活用して廃棄が生じないように工夫しているそうです。実際、これまで一度も賞味期限が切れて廃棄したということがないのだとか!環境にとってもサステナブルでとても参考になりました。
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以上の3点を中心に説明があり、地域貢献とビジネスの両立を志す参加者にとって大きな刺激となりました。
また、SNSやマスメディアを利用したPR活動も積極的に行っており、その具体的なやり方など、オーナーの皆さんがすぐに活用できる方法の説明もありました。
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講座の参加者に向けて、昌史さんからは次のようなメッセージが贈られました。
昌史さん
「あくまでぼくの場合ですけど。元々は蕎麦屋だったので最初は蕎麦の商品を作ったりしていたんですけど、途中でそれは間違いだなと気づきました。今は、商品開発の出発点は理念や原体験です。地域と農業を未来に継承する、という理念に基づいて取り組む社会課題を設定して、商品を作って、売ることでその課題を解決する。共感が生まれることで応援されやすくなるし、メディアにも取り上げられやすくなります。皆さんも、今日の気づきを活かして小さな一歩を踏み出してほしいと思います。」
参加者の声
参加したオーナーの皆さんからは、苦労した経験やメディアの活用方法などの質問が挙げられたほか、
「地域貢献をビジネスで解決していく方向性について理解できた」
「自分の事業にも活かせる点があり参考になった」
という声があがりました。
おわりに
新しいチャレンジを応援する椎葉ラボが一番大事にしているのは「とりあえず動いてみること」ですが、それと並行して「適切に知識を身につけること」もまた重要です。
今回の講座では、椎葉村を中心に活動するお二人を講師に迎えて、地方での新規事業に関わるお金や企画について知識を得られる機会をつくりました。ご参加いただいた講師およびプロジェクトオーナーの皆さま、どうもありがとうございました。
皆様の熱い想いで、椎葉を一緒に盛り上げていきましょう!!
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文:東海林蓮