自分らしい働きかたを追求する【定着支援の裏側】
就労系福祉サービスの中に、
『就労定着支援』というサービスがあります。
就職して、その職場に長く定着して働いていけるよう
ご本人と企業との橋渡し役として支援していくものです。
発達障害や精神疾患のある方にとって、
就職先での困りごとは、
はじめはなかなか職場の方に相談しにくいということもあるので、
とても心強いサービスだと思います。
でも、
この定着支援には、よく誤解も生じます。
それは、どんな状況であっても、
絶対に仕事をやめさせないようにされてしまう。
と思われているところ。
実際に、仕事を続けさせることが目的となってしまうことがあるように感じます。
私もこの支援にたずさわっていますが、
決して、やめさせないためのサービスではないのです。
もちろん、ここでやめたらもったいない!
と、あの手この手で続けられるように手をつくすことはありますが、
少しでも長く働いてもらうためのサポートではなく、
自分らしい働き方を追求していくためのサポート。
だと、捉えてもらうといいかもしれません。
この制度がスタートしたばかり(H30年)のころは、
定着支援というその名のとおり、
障害者が職場に定着していけるように、
ありとあらゆることをサポートしていこうという風がふいていました。
特に、発達障害の方や精神疾患の方は、
離職率がほかの障害の方より高く、
ちょっとしたことで、やめてしまう人が多いというイメージが強いのです。
特性や症状だから仕方がないといえばそれまでで、
知識として周囲が障害を理解していたとしても、
個人の性格もあいまって、どんな対応をとったらいいのかは、
個人差がはげしく、むずかしいところです。
だからなおさら、
簡単にやめてしまわないように(企業側もあきらめてしまわないように)、
第三者的立場で、
両者の考えや状況をくみとり間に入ってくれる支援員を、
最長3年(石の上にも三年、だから?)、
この期間でなんとか仕事を、良好な人間関係を、定着させていこう!
という国の取り組みがはじまったのでした。
ご本人の働く意欲がさがらないようにとか、
仕事に支障がでるようなストレスは排除していこうとか、
企業ができるだけ配慮をしてくれるように説得するとか、
ぜったいにやめないように・・・
という思いでやっていた方は多かったと思う。
私も当時は、
せっかくやっとの思いで就職できたのだから、
あともう少しだけ、もうちょっとがんばってみて!
と励まし、つらい気持ちに共感するよりは、
いかに続けた方が本人のためであるか、もっともらしい言葉ばかりかけていたような気がします。
ご本人も、やっぱり、やめない方がいいのかな・・・
と何となく考え直し、
結果、辞めさせたくない企業とご家族からは感謝され・・・
でも、その方法ではすぐに行き詰ってしまうのです。
本当に苦しくて、どうしようもないとき、
もうやめたいというつらい気持ちを、
支援員の私へは言えなかったと、後から聞かされたことがありました。
仕事を続けることが正しいと思っている人へ、
仕事に行きたくない、やめたい、続けれない、
とは言えないのです。
こうなると、何のためのサポートなのかわかりません。
あくまでも、ご本人が主役ですので、
支援員に本音が言えなくなってしまうようでは、
もう働くことへの相談など意味がないのです。
働く人の困りごとを一緒に考え、
雇う側の困りごとも一緒に考える。
どちらの我慢が大変なのかも考える。
なにかよい方法がないか考えるところは、どのサービスでも同じですが、
定着支援だからこその視点もあります。
なんでこの仕事なのか、
どうしてこの会社なのか、
ここじゃなきゃ本当にだめなのか。
ここをやめたら、本当にだめな人間になってしまうのか。
自分らしく働く意欲だけは、持ちつづけたいですよね。
これは、自分がもしも応援される側であったら、そう願うと思います。
仕事になんか行きたくない!
もう、こんな会社やめたい!
こんな自分はもう嫌だ!
・・・と声に出しても大丈夫です。
その人らしさを追求すれば、転職も真剣に考え、
心にうそがないように、
新しい道へ気持ちよく進めるように、やめ方もサポートします。
この数年で、
定着支援もあたらしい意義を持つように
変化してきました。
ひとりではなく、
あなたを応援してくれる人と一緒に、
自分だけの働き方を考えてみるのもいいかもしれません。
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