ギンギラギンにさりげなく

タダノヒトミ

2020年2月25日 23:00

スーパー玉出を知らない大阪人はいない。

で、あろう。たぶん。

いや知らんけど。

例のド派手な黄色の看板。

200m先からでも視認できる、パチンコ屋かと見まごうばかりのまばゆいネオン。

知らない人が見たら、どう考えてもスーパーとは思うまい。

最近では海外からのお客さんも多く、どこかの国ではガイドブックにも載っているとかいないとか。

その昔、韓国を訪れる日本人の間で瞬発的にカルフールが流行ったようなものだろうか。

え？それはええように言いすぎ？さよか。

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その昔、スーパー玉出にはとてもお世話になったことがある。

当時付き合っていた彼が、あのニシナリ、のすぐ近くに住んでいた。

初めて遊びに行くと決まった時、しつこく何度も「駅まで迎えに行くから、構内で待っときや。絶対やで。」と念押ししてくる彼に「えー、そこまで心配する？西成ってそんなに？あれなん？？」って思っていたわたしは、最寄り駅を降りた瞬間、異次元に吸い込まれたかと思った。

駅を一歩出たら目の前に横たわる、どデカい荷物とおっちゃんと犬。

その隣もまた、犬と、おっちゃんと、犬。

え？ダブル？

なんで犬と川の字？あ、川ちゃうな、小の字？？

ねぇ、おっちゃんよ、どう考えてもそれはエンゲル係数オーバーでしょうが。

昼間からワンカップ片手に絡んでくるおっちゃんくらいでは何の驚きもない、神戸でもわりとカジュアルな方のシタマチ、に住んでいたわたしですら冠に『あの』をつけてしまうほどのその街は、通ってみたらなかなか味のあるええところやった。

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大阪市内にスーパー玉出はたくさんあるけど、それぞれのお店によってずいぶん様子が違うみたい。

わたしの印象では新今宮店の物価の安さは常軌を逸していたように思う。

玉出といえば、の有名なあの1円セールも、新今宮店ではもやし、豆腐、うどん玉、など庶民の味方となる食材がメインで、とにかく毎日行けば何かが破格で買えた。

野菜もめちゃめちゃ安くて、いつも自炊していた彼は、玉出で買った野菜でカレーをよく作っていた。給料日間際でもなんでもとにかく、玉出に行ってれば食いっぱぐれることはない。

また、当時の玉出のレジは外国人の留学生みたいな子が多く、計算が異常に速かった。こちらがお金を出す前にあらゆるパターンを想定しているらしく、お札を出して手渡した瞬間にもうきっちりお釣りが返ってきてちょっとびっくりする。端数だけ小銭を出したとしても、まったく変わらないお釣りの計算能力の高さには毎回驚かされたものだ。

やがて、大阪から関東へ転職することになった彼についてわたしも引っ越しをしたため、わたしたちはスーパー玉出との付き合いにピリオドを打つことになった。

だが、関西に帰ってきてたまーにあのド派手な看板を見るたび、ああまたあそこの激安野菜たちを買いたい…という気持ちがどこからともなく湧いてくる。

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先日、友人を車で大阪まで送っていくことになり、たまたま通りかかった道のちょっと先に、懐かしいあの黄色い看板を見つけた。

「あっ！あんなとこに玉出あるやんー！！」

「ちょっとだけ！ちょっと寄ってもいい？」

どうしても好奇心を止められなかったわたしは、友人を車に残していそいそとネオンの瞬く方へと吸い寄せられるように歩いていた。

そこはスーパー玉出、堀江店。

あの大阪随一のおしゃれな街、堀江にまで、玉出が進出しているなんて！

わたしは驚きと喜びを隠せなかった。

道路を挟んだ向かいから看板の写真を撮りながら、中の様子を伺う。