500円
500円って、私は好き
硬貨の中で1番大きくて、金色なのも好き
ワンコインってちょうどいい
そんな意味だと思う、だから好き
休みの日、私は500円玉だけを
小さな財布に入れて外に出る
休みの日に500円玉がある時だけする
ちょっとした楽しみみたいなものだ
今日は500円玉と、友達が勧めてくれた本と
誰かへ宛てた手紙と、ケータイとイヤホン
それが入るだけのカバンを持って出かけた
靴はConverseを履く
真っ赤ではないけれど、気に入っている
足元を見る度にチラつく星が
下を向く自分を慰めているみたいで優しい
500円で今日はどら焼きと
果汁100%のりんごジュースを買った
オシャレなカフェにいけない500円が
私にはぴったりだった
河川敷に着いて
ベンチを後目に地べたに座る
決して楽しそうに笑いながらベンチに座っている高校生に怯えた訳では無い
たまには地べたでもいいと思った
本当にそう思った
16時を過ぎてから家を出たのには理由がある
今日は夕日が沈むのをただ眺めて
一日を終えてみたかった
テヒョンさんがしていた一日の終わり方を
私もしてみたかったのだ
私を囲うようにして鳴くカエルも
制服の白さが眩しい高校生も
バイバイと言いながら二手に分かれる小学生も
風が吹く度に刺さる隣の草も
今日はいつもより心地いい
人の歩く足音が
時計の針みたいな心地良さをしているのを
今日初めて知った
家で聞くあの寂しい音とは違って
時計を全部外に置いちゃえばいいと思ったくらいだ
さっきまでは橋の上にぽつんと浮いていた
気付いたら橋の上にそっと乗っている
太陽が夕焼けになるのを
あっという間だと思う人ではなくて
「夕焼けが19分つづいた」と
そんな話ができる人になりたい
私がテヒョンさんを好きな理由は
そんな所にあると思う
手で隠せるほどの大きさの光は
本当は自分の何倍も大きくて
確かめたこともないその大きさを
知りたいと思う気持ちが
その光よりも大きかったらいい
夕焼けって空がオレンジ色に染まることを
そうやって呼ぶらしい
光の波長によって変化するこのオレンジを
自分の知識でも何でもなく
ただ漠然と現象として眺める時間は
いつもとなんだか違ったように感じた
もうすぐあのオレンジは
違う色に変わるだろうか
眩しくて残像を残していたあの光が
山に隠れて見えなくなった
色だけを残して見えなくなった
街灯が灯る
19分と数秒
いい一日だったと思った
さっきよりも明るい月が
一日が終わったと言っているような気がした
500円で買ったのは
どら焼きと
果汁100%のりんごジュースと
19分と数秒だった
私は500円が好きだな