空き地・空き家の活用だけでなく、コミュニティ・居場所づくりの参考になるコミュニティ農園って?
空き地・空き家が増えると犯罪率が増加するという調査結果を知っていますか?
犯罪率のほかにも、景観の悪化や、その街自体の魅力減少など多くのマイナス要素が生まれてしまいます。
現在、日本全国の空き家率は約14%で今後高齢化の影響もあり、さらに増えていくことが予想されているんです。
参考資料:
総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」
今回はそんな空き地・空き家を活用し、農園という切り口からコミュニティを運営している事例をご紹介します!空き地・空き家活用を考えている方だけでなく、コミュニティ運営や居場所づくりをしている方にとっても参考になる内容になっているので、ぜひご自身の活動にお役立てください。
今回は「コミュニティの教室 第6期」にゲストとして参加された一般社団法人グッドラッグ代表の金田康孝さんの回をもとに学びをシェアしていきたいと思います。
金田 康孝(かねだ・やすたか)
一般社団法人グッドラック代表理事
1986年生まれ。神戸芸術工科大学を卒業後、NPO法人Co.to.hana共同設立。2018年12月より「一般社団法人グッドラック」を設立、代表理事に就任。食と農のコミュニティ「みんなのうえん」の運営を主軸に、都市部の遊休地活用のコンサルティング、近畿大学特別講師、イベントプロデュースなどに取り組む。
金田さんが代表を務める「一般社団法人グッドラック」が運営している大阪の北加賀谷にあるコミュニティ農園である「みんなのうえん」は、単なる貸し農園としての枠を越えた場になっているんです。
だれでも関われる
農と食をテーマにしたコミュニティ
2011年9月からはじまった「みんなのうえん」が生まれた背景にはこんなエピソードがありました。
産業が衰退してしまった北加賀谷の不動産会社は、2005年ごろから地元をデザイン・アートの力で作り直そうとデザイナーやアーティストを誘致しました。一方で、若いクリエイターと地元の高齢な方々との間には埋まらない溝が課題として出てきました。
建築学科出身で、デザインの勉強をしていた金田さんは、その溝をデザインの力で埋めようと考え、農・食というだれでも関われるテーマに、コミュニティをつくるヒントがあるのではないかと考えました。不動産会社に空き地を農園として活用する方法を提案し、不動産会社のニーズと合致し、農園として活用することが決定しました。
では、「みんなのうえん」では実際にどんなふうにコミュニティとしての活動がなされているのでしょうか?
利用者の多くは一般的な貸し農園と同様、野菜を自分で作ってみたいという理由以外に、いろいろな人と関わりたい・何かしてみたいという思いを持っている人が多いんだとか。
イベント開催日には、大阪の中心部などいろいろな地域から参加者が集まってきます。
農園利用の仕方も、自分に合った方法を選ぶことができます。特徴的なのが、チームコース。農作業を一緒にする仲間をつくったり、栽培方法を共に学びたい人向けのコースで、8人ほどで一チームを作ります。
また、企業のように農園自体に共通の目的があるわけではないので、自分に合った関わり方ができるのも魅力の一つ。所属でつながるコミュニティでもないため、自分のいろいろな側面を出すことができ、自分の興味・関心をオープンに話すことができる場になっています。
農園の利用者が挑戦できる場としては、こんな活動も行われています。
このように、地域の人が自分の思いを形にできる場が生まれています。ちなみに金田さんなど運営側は企画をほぼ行っておらず、主催者の集客の手伝いなどの裏方のサポートを行っているとのことでした。
このように運営側がコミュニティを盛り上げようとイベントを頻繁に開催するのではなく、利用者が本当にやりたいことを後押しするという姿勢が、このコミュニティの良さを引き立てているように感じました。
コミュニティ農園が
街にある意味とは?
「みんなのうえん」は農園利用者だけでなく、近隣地域にとっても重要な役割を果たしているんです。
冒頭でお伝えしたように、空き地・空き家が増えることで、景観の悪化や、その街自体の魅力が減り、不動産価値が減少してしまいますが、コミュニティ農園という形で活用され、地域の人や遠方からも人が来ることで関係人口も増え、不動産の価値が向上します。
そのほかにも、街に畑があることで雨水が吸収され洪水のリスクが軽減されたり、地域の人同士の交流が活性化され治安の維持にもつながります。
そして、地域全体にとっては生物多様性の維持・促進のほか、都市と農村のつながりを持つきっかけにもなります。
図のように、コミュニティ農園は、農園利用者の自己実現の場から地域の生物多様性までさまざまな役割を担える構造になっているんです!
密集市街地は大阪や東京に多く、国の施策として古い建物を壊し行政が更新していくことが求められています。政府が補助金を使って、空き地や空き家を農地として活用していくことに前向きなんだとか。
居場所づくりなどのコミュニティを運営しようとしている方は、空き地や空き家を農地として活用してコミュニティをつくるという方法も検討してみてはいかがでしょうか。
利用者が積極的にコミュニティに
関わりたいと思う要素とは?
金田さんのお話しをお聞きして、「みんなのうえん」は意図的にコミュニティを作っているというよりも、農という“手段”を活用し、いい意味で手を抜くことで、結果的に利用者側が主体的に活動する余白が生まれていると感じました。
運営側がすべての役割を担おうと意気込んで準備万端にするのではなく、利用者側にスポットライトを当てることが、利用者がコミュニティに積極的に関わりたいと思う要因になるのかもしれませんね。
農・食をテーマにコミュニティをつくることは、そのコミュニティに関わる人をはじめ、近隣地域や地域全体、行政にとってもメリットがあること。
私自身、近所の人と挨拶をしたり、目を合わせることすら躊躇してしまうことがあります。でも、最近は自宅にいることが増え、自分が住んでいる地域でつながりを持てていないことに違和感を感じました。
オンラインのつながりさえあればいいのでしょうか…
電気やWi-Fiが途切れたら機能しない自分のつながりの脆弱さに気付き、自分の生き方を振り返るきっかけにもなった回でした。
あなたもぜひ、地元のコミュニティや居場所について考えてみてはいかがでしょうか。あなたの生き方にもつながる大事な要素が見つかるかもしれませんよ。
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