ファンには、それぞれの「文脈」がある。コアなファンを増やすために参考にしたいこと。
「インスタグラムのハッシュタグを通してゆるいコミュニティが生まれている。」
「時間軸でファンをつくる。」
などなど、新しい気づきをもらいました!それが、ファンを軸としたマーケティング戦略を行う『熱狂顧客戦略』著者の高橋遼さん。
今回は「コミュニティの教室 第6期」にゲストとして登壇された高橋さんの回をもとに学びをシェアしていきたいと思います。
高橋 遼(たかはし・りょう)
トライバルメディアハウス コミュニケーションデザイナー
ヤッホーブルーイング エア社員
2010年にトライバルメディアハウスへ参画。主にファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを担当。2020年2月よりヤッホーブルーイングのエア社員に就任。宣伝会議『ニューノーマル時代のブランド戦略から考える顧客獲得講座』『ファンイベント講座』など登壇多数。MarkeZineにて『ファンを軸としたマーケティングの設計図』を連載。著書に『熱狂顧客戦略』。
ファンと一口に言っても、一人ひとりブランドに対しての思い出やストーリーがあります。それを知ることで、より熱狂的なファンを増やしていくためにどういうことをしていけばいいのかその糸口がわかるんです。
このnoteは、すでにファンでいてくれている方を深く知り、よりコアなファンを増やしていくためにどんなことをすればいいのかヒントになる内容になっています。
ぜひ、ご自身が関わる組織や商品、サービスを思い浮かべながら今後のファンとの関わり方や、よりコアなファンを増やすための参考にしてみてください。
消費が意味化される時代へ
ファンとの関係性などをご紹介する前に、最近の消費の傾向に少し触れておきます。
高橋さんいわく、コロナで「応援消費」が浮き彫りになりましたが、それ以前からマーケティングの流れとして、消費活動においてだけでなく、自分が何とともに生きているか、より明確に「意味化」される時代になっていくのではないかとのこと。
なんとなく便利だし、使っていて不都合がない。
↓
使っていて気持ちいい。好きだから使っている。
という選び方が多くなっていく。
商品の性能でほかの商品と差別化することが難しくなってきているからこそ、お客さんにとってその商品がどんな意味を持つのかまで考える必要があるんです。
いくら質のいい商品を作ったとしても、それを手に取ったお客さんにとってそれがどんな意味を持つのかまで考えないとお客さんの心は離れていってしまうのかもしれません。
そして、同じブランドの商品を手に取ったお客さん同士がコミュニケーションを取れる場があることで、よりそのブランドへの熱量を上げることにつながると言えます。
そういった意味で、コミュニティ自体の重要性も上がっていくのではないかと高橋さん。
消費者が商品やサービスの感想をかんたんに発信することができる時代だからこそ、オンラインでのコミュニティの価値も高まっていきそうだと感じました。
インスタグラムのハッシュタグがコミュニティに!
次はインスタグラム上で企業側からでなく、ファンから自然発生的に生まれたコミュニティの事例をご紹介していきます。
まずは、ファッションセンターしまむらに関するハッシュタグ。
「#しまパト」は、「しまむらパトロール」の略で、商品の入れ替えが頻繁に行われるしまむらで、安くていい商品ゲットしたよというふうに投稿している人が多数。
#しまパトだけで、54万件以上投稿されているのはすごいですね!!
お次は、「#ヤマハが美しい」。
バイクで訪れた場所をバックに、自分のヤマハの車体を写した投稿がほとんど。
「#スズキが美しい」「#ホンダが美しい」の投稿は少なく、「#ヤマハが美しい」がダントツで投稿数が多いんです。
それに対して、ヤマハユーザーは「なんとなくわかる」との声が多いんだとか。
他にも、ソニーのカメラを使う多くのユーザーが「#ソニー一派」と投稿するのに対して、キャノンやニコンユーザーは、「#キャノン党」「#ニコン党」という投稿のほうが多いんです。
「こういった違いを生むものはなんなのか?」という参加者からの問いに対して、ユーザー同士の、そのブランドに感じている文脈が重なり合ったことで、それがハッシュタグに表れているのではないかと高橋さん。
その商品を使っていく中で生まれるカルチャーがあり、それが「なんとなく~っぽい」「なんとなくわかる」というふうにユーザー同士の共感につながるんですね。
あなたも自身が関わるブランドのハッシュタグが付いた直近50件の投稿をチェックしてみてください。ファンはどういう文脈でそのブランドに触れ、何を求めているのか見えてくるかもしれません。
そして、これまで約60万部売り上げている「ほぼ日手帳」からファンの文脈がよく見えると高橋さん。
下の図のように、絵日記やポエム帳、My図鑑などユーザーによって使い方はそれぞれで、同じ商品を使っていても、その楽しみ方は人によって異なるんです。
それを、「文脈」という言葉で表現した高橋さん。
自身が関わる商品やサービスの周りには、どんな文脈が含まれているのか深掘って考えることが、コミュニティの出発点になるのだそうです。
「文脈」がコミュニティの出発点になる
それでは、「文脈」がコミュニティの出発点になるとはどういうことでしょうか?
それを説明するために、ランニングシューズを例にユーザーの関与の度合いと、文脈の図をご覧ください。
横軸が、文脈、つまり楽しみ方の幅。
縦軸が、関与度の高さ。
このようにランニングシューズ一つとっても文脈はそれぞれ。だからこそ、それぞれの文脈に合った体験の設定が必要なんです。
コミュニティは、一つのブランドのファンの集まりと思われがちですが、ファンの文脈はそれぞれ。だからそれぞれの文脈に合わせて考えることがコミュニティを意識する上で重要になってきます。
そして、既存の熱狂的なファンの、ブランドへの文脈を理解することで、まだファンでない人や、ライトなファンの心に火を灯す瞬間を作るための施策を行うスタート地点に立てます。
そして、高橋さんは時間軸でファンをつくることを意識しているんだとか。
その人の人生のどの瞬間に熱量が高まるのか?
どういう状態のときに熱量が高まるのか?
そういった「瞬間」を意識して、戦略を立てているんです。
どういう場にしたらお客さんは喜んでくれるか?
どういう接客をしたらファンになってくれるか?
ということももちろん大事ですが、
それに加えて、
お客さんにとってその瞬間はどういう意味を持つのか?
どういうタイミングで、商品を手に取りたいと思うのか?
なども考える必要があるんですね。
お客さんが心動く瞬間がどこなのか知りその瞬間をつくることが、ファンを軸としたマーケティング戦略の一つの側面なのかもしれません。
おわりに
いかがだったでしょうか?
インスタグラム上でハッシュタグを通してファン同士の交流が生まれ、コミュニティが自然発生的にできていることがとてもおもしろいと思いました。
また、同じ商品を選び使っていたとしても、それを選ぶ理由は人それぞれであることも図を見てたしかにそうだなと気付かされました。
さまざまなファンの文脈を知ることで、より自身がか関わる商品やサービスに愛着が持てそうですよね。そういった意味で、ファンを理解することは、商品を使うファンにとっても、それを提供する側にとっても嬉しいことかもしれませんね。