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家族と大掃除なんてできなかった


年末に夫と二人で大掃除をした。

「大掃除したい!」と言うわたしに対して
「いつにしようか?」と言う夫。
とんとん拍子に日にちが決まり、当日を迎える。


「どこ掃除しようか?」
「ここの汚れが気になってるんだよね〜」
あれやこれやと話しながら
「じゃあ俺がここやるよ」
「わかった!そしたらわたしはこっちやるね」
と各自掃除する場所を決めて、それぞれに取り掛かる。


お風呂場の普段なかなか掃除しない天井部分や、手が届かない壁の上の方などを磨く。
そのときにふと、
そういえば実家では、大掃除なんてできなかったなあ…なんてことを思い返していた。


実家にいたときは父と妹とわたしの三人暮らしだったけれど、父も妹も掃除…というより家事全般がきらいな人たちだった。


そのためわたしが
「みんなで掃除しない?」なんて言おうものなら
めんどくさがられるのはもちろん、

「お姉ちゃん、なに張り切ってんの?ウケるw」
「一人でやってろよ」

なんて言われて、みんなで掃除しよう!って言ったわたしが空回ってるみたいになるのがオチである。


いや、もしかしたら実際に空回っていたのかもしれない。
家をきれいにしよう!家族で協力しようよ!
と言うわたしは、父と妹からしてみたらまるで合唱コンクールで張り切る女子さながらで
一人で張り切ってるイタいやつだったのかもしれない。

きっと二人と温度感やテンションがちがったのだ。
それならそれでいい。



ただ…父も妹も、意地悪だった。



めんどくさいならめんどくさいで
「はいはい」と適当に流したり、
「めんどくさ」と放っておいてくれたらいい。

けれど二人はそうはせず、わざわざ笑いものにして吊し上げる…そんなところがあった。


それはわたしに対してだけではない。
周囲からちょっと浮いている人や、頑張ろうとして空回っている人、要領が悪かったり、生きるのに不器用な人たちを見つけては
「なにあの人。ウケるw」
などと言って笑ったり、見下す。
そんなところがあった。



2〜3年前に妹と甥っ子と三人で、某テーマパークに行ったときのことを覚えてる。
当時の日記を見返すとこう書いてある。

仕事の話も大して盛り上がらず、妹が楽しむのは基本悪口。
テーマパークでも
「あの年齢であの服装ってイタいね」
「地雷系って感じw」
「なんか世間のはみ出し者みたいな人多くない?」
などと人を見下す発言ばかり。
だからなんなんだろう。
他人に興味がありすぎてめんどくさい。
もう妹と楽しく会うことはできないのだろうか。

mimi 当時の日記より


自分とはちがうタイプの人を
「そういう人もいるんだな〜」で終わらせず、
「あの話し方w」
「あ、そっち系の人ねw」
と見下して、笑いものにして、イジる。

妹にはとくにそんなところがあり、接していると心がざわざわすることが多かった。


そしてそんな家族のなかでわたしはきっと
“イタい奴”であり“イジってもいい奴”だったのだろう。


だからなにを言っても

「イタい奴がまた空回ってるよw」

そう思われるのがオチで、父にも妹にも、
まともに取り合ってもらえないことが多かった。


実の家族のなかでヒエラルキー最下層に位置し、イタい奴代表としてイジられていたわたし。


そんなわたしがいまは新しく家庭を持ち、
夫と二人で協力して大掃除に取り掛かっている。

「大掃除やろうよ!」と言うと
当たり前のように
「いいよ!やろう!」と言ってくれる夫。


もしかしたら夫だって、実はわたしの提案にめんどくさいと思っているかもしれない。

けれどそれでも夫は、わたしを笑ったり、見下したり、イジったりせず
いつだって誠実に向き合ってくれる。
めんどくさいときは「めんどくさい」と言ってくれるし
おかしいと思うことがあったらバカにするのではなく、話し合ってくれる。
だから協力し合うことができる。


家族なら当たり前のことなのかもしれないけれど
わたしの実の家族はそうではなかったから
大掃除を協力してできる、という
そんななんでもないことがうれしくてうれしくて、お風呂場の壁を磨きながら
わたしはずっとこんな家族が欲しかったんだなあ。
こんなふうに一緒に大掃除できるなんて幸せだなあ。としみじみ思った。



ピカピカになった家は気持ちよく、二人で喜び合う。

「mimiちゃん、お家がきれいでまぶしいね。
掃除してくれてありがとう!」

「夫くんも、たくさん掃除してくれてありがとう」


きれいになったね。
ありがとう。
これで気持ちよく年が越せるね。

そんなことを言い合い、お茶を飲む。


こんなふうに家族が協力して大掃除できることは当たり前のことじゃない。
とってもうれしくて幸せなことなのだ。


大掃除どうこう以前に、バカにされたり、否定されたり、見下されることなく、
なんの不安も感じずに、家のなかで安心して
わたしがわたしのままでいられる。


人と暮らす家のなかで、こんなことってはじめてだ。
家族が、大切な人が、いつも自分の味方でいてくれることって
こんなにうれしくて幸せなことなんだ。



わたしは、夫と大掃除できたことが涙がでるほどうれしかった。

いや、きっと少し泣いてた。




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