ゆっくりと「あとあがき」――『RDG』評論を振り返りながら
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振り返り
2013年の8月の「コミックマーケット84」で頒布された同人誌に『RDG レッドデータガール』のアニメと原作小説を往き来する評論を書いたことがありました。最近、このアニメを見たという人がTLに居たことで、これを思い出したこともあり、その頃に書いた「あとあがき」を少し手直しして、拙稿のご紹介をしたいと思います。
2年も前のことになりますが、アニメ・マンガ評論刊行会『アニバタ Vol.5 [特集]P.A.WORKS ②作品各論編』に『RDG』をとりあげた、「ゆっくりと口紅――あるいは『RDG』の規範と構造について――」を寄稿しました。
その時「あとあがき」として、「そもそも、その評論って、どんな内容なの?」とお思いの方、そして、いずれ現われるであろう読んで下さる方に向けての解題を書きました。と言うのも、評論集などをお手に取られる方は、おそらく一般の本であれば、本屋に足を運び、自分の手で本の目次と跋(あとがき)をめくり、目を通し、そしてその上で買うか否かを決める方が多いことと思います。それに代わるものになればと思い、そのような需要にささやかながら応えられるようにと記しました。
そんな「あとがき」風悪足掻きとしての「あとあがき」です。よろしければ以下をご覧下さい。
あとがき
『RDG レッドデータガール』は、ファンタジーに定評のある荻原規子原作の小説をもとに、P.A. WORKS制作・篠原俊哉監督でアニメ化された作品です。アニメ化にあたっては、岸田メルがキャラクター原案を担当したこともあり、主人公の泉子のほか、登場人物全般が独特のかわいらしさを備えた美形の容姿となっています(同時期に出版された角川スニーカー文庫版小説の挿画も岸田メル担当で、同様のイラストを目にすることができます)。
作品紹介のコピーは「『普通』になりたい少女の願いが、未来を変える――全も悪もない、新たな学園ファンタジー!」。全6巻からなる小説のうち、5巻までがアニメ化されました。
ワタシの評論では、「はじめてのお化粧」というサブタイトルを持つ、原作小説の2巻とアニメの5話を採り上げ、両者の差分から物語の核心部分を探っています。
あと-あ-がき
というわけで、ゆっくりと口紅というものが存在することになろう。・・・・・・主語なしで、ゆっくりと口紅を組み合わせた仮説、この人工の補助装置は、何を意味するのだろうか。(*)
『RDG レッドデータガール』を扱った「ゆっくりと口紅」という論考。このタイトルは、それ自体いくつかの解釈が可能です。普通に考えれば、例えば「(少女が)ゆっくりと口紅(を引く)」という風に、主語と述語を足すことになるでしょう。この場合、文法的に見れば「ゆっくり(と)」という副詞になるわけです。未見の方なら、「普通」になりたい少女の物語…と聞けば、なるほど化粧にもあこがれる年頃か、という風に考えるかもしれません。あるいは、視聴された方ならば「あのシーンのことか?」と思い当たる向きもあるかもしれません。けれども、このタイトルは「ゆっくり」と「口紅」を並列に挙げているものであることを示すのが、筆者による解題となります。
「ゆっくり」も「口紅」も、ともに『RDG』の作品中に出てくるものであるどころか、この2つが『RDG』という物語の鍵であると言ってもよいでしょう。それらが、この作品の、この物語の中で、どのような役割を果たしているのか? そして、この2つの役割を踏まえると、アニメと原作の相違について、どのような見方ができるのか?……こういったことについて検討したものが、この「ゆっくりと口紅」となっています。
なお、『RDG レッドデータガール』の小説版の6巻を読んだのは、アニメ終了後、この評論を書いたずっと後でしたが、拙論で提示した見立てが、見事に的中した結末が読めたことで、物語の主人公たちとはまた違った達成感や嬉しさを味わうことができたのがいい思い出です。
『RDG』論を執筆したきっかけは、良かったという方も、イマイチだったというからも、どちらもその感想の中に、何かモヤっとしたものが、あるいは残っているのではないかと思ったからでした。良かったけれど、上手く言い表せない――そういった方にも、あるいは逆に「『RDG』はイマイチだった…」という感想をお持ちの方がいらしたら、そのような方にはなおのこと、ご一読いただきたいと思いながら書いています。また、未見・未読の方で、多少内容を知ってしまっても、見るか悩んでいるような方には、これからの視聴の手引として頂ければ幸いです。
このような今次の論考の狙いをやや大仰に示すならば、アニメ作品を物語として楽しむための視点を広げる一助とすること……と言ったところでしょうか。それが出来ているかについては、是非お読み頂き、忌憚のないご意見をお知らせ頂きたいところです。
ちなみに、いつも脚注の多い拙論ですが、これに限ってはレファレンスが公式HPのインタヴューと原作小説(下記リンク参照)等のみに絞られています。参照しました原作の角川スニーカー文庫版は上記のとおり、岸田メルによる表紙と挿絵なので、なかなかカワイイのでオススメですよ?!
秋の夜長の読書の御供に是非、ご検討ください!
注記
(*) この部分は、あるもののパロディとなっています。お解りの方、さすがです。なお、正解は有料部分に書いておきます。
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