アンチ・エピックス――『女のいない男たち』評
何かを喪失した男たち――あるいは「まえがき」のある短編集について今春出版された村上春樹の短編集『女のいない男たち』に出てくる「男たち」には、女が「いない」のではない。不在や非所有としての「いない」ではなく、一度は女のいた男たちの話であるから、「いなくなった」という方が、ここのニュアンスはより正確に伝わるだろう(従って賢者タイムは出てくるが、例によって魔法使いなど皆無の世界である)。
その意味で、この短編集の全体を貫いているテーマは、喪失だと言える。それぞれをこの視点から見て