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赤い月の列車
荒野の真ん中に、唐突に鉄塔が立っている。
錆色の鉄塔は、まだ建てている途中で、
その足元には、大勢の人々。
何を作っているのですか。
駅です。
駅?
そう、「赤い月の列車」の駅。
五年に一度、赤い月の晩に、列車がくるという。
天空を走る列車が。
その列車の停まる駅が、ちょうどあの鉄塔の先。
その日のために、その列車に乗るために、
みんなで鉄塔を建てている。
あの天空にプラットホームを作るのだ、と。
空の果てからふいに現われ、
蒸気をはきながら、やってくる列車。
赤い月に照らされて走る、闇色の列車。
あたしはうんと顎をあげ、
首が痛くなるほどに天をみあげ、
そこに走る列車を思い描いた。
たくさんの人々と共に。
祈るような気持で。
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いつかの満月の日に見た夢。
写真は、今宵の月。
十三夜の月。
あと二日で中秋の名月。
その月が、もしも赤く輝いたなら……。