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#それでもスポーツで生きていく・#12
~各論【第1章】
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
名古屋・豊田編
こんにちは、スポーツエッセイスト・岡田浩志です。
昨日、各論【第1章】1本目の文章をアップしましたが、さっそく我が地元のスポーツ現場、豊田スタジアムを訪問して参りました。
今年、ラグビーW杯の開催会場になっている豊田スタジアム。場内の照明がLEDに改修されたこともあり、試合入場時には、暗転などの演出も行われるようになりました。
場内は完売札止めの42,819名の来場者で埋め尽くされ、ホームの名古屋グランパスが川崎フロンターレを相手に3ー0の快勝劇。
2005-2008シーズン途中まで、自分もこのクラブのスタッフでしたし、Jリーグ2年目からですが、ずっと応援しているので、動向は常に気にしています。
この夏のゲームは『鯱の大祭典』と銘打ち、スタジアムイベントに限らず、愛知県や名古屋市とコラボした企画が次々打たれています。この期間中の試合の完売札止めも2戦連続のこと。
チームが5月から勝利に見放されていたなかでも、集客的には頑張っている、と言えるでしょう。
一点気になるポイントがあったとすれば、快勝劇にも関わらず、試合終了時にはメインスタンドのお客さんが足早に会場を後にしてしまっていること。
豊田スタジアムからの帰路が混みあうなど、いろいろな背景があってこうなってしまうのですが、クラブも新しい顧客の獲得に躍起になっているので、その顧客の定着という点では、まだこれからの課題も残しているといえましょう。
さて、こうした規模の大きな取り組みについて、それを掘り下げるのは、僕の旅の役割ではない、と思っています。
前回の投稿で纏めた3つのポイントをおさらいします。
『存在目的』に耳を傾ける旅
・3つのエッセンス
1. ミッション・ステートメントを持たない
( 対話から存在目的は進化する )
2. イノベーションは常に組織の末端で起こる
( 変化を必要と感じている人が起点となる )
3. 正しいチャンスは外部からの働きかけ
( 自分の使命に従うこと、明確にすること )
名古屋グランパスのミッション
毎年チームスローガンを変更している名古屋グランパスですが、ある程度固定で使用されているステートメントは『LOVE♥️GRAMPUS』というメッセージになると思います。
2015年から使用されることになったこのステートメント。「ふれあいフェスタ」と言われていたファン感謝デーも『LOVE♥️GRAMPUS Festa』いう名称になり、今もこの名前を使用しています。
2015年には、数少ないクラブ生え抜き選手だった中村直志氏が現役引退してフロントへと転じ、ホームタウン推進部の一員として、ファンと一緒になって地域活動を行うようになりました。
ファンとクラブの距離感が近くなり、いつしかサポーターも自分達のことを『ファミリー』と名乗るようになりました。
『グランパス愛』を原点として、すべてステークホルダーが『ファミリー』の名のもと繋がりあう。抽象的な概念ではあるけれど、それぞれに意味を感じながら、関係性を構築してゆく、よいキーワードになっているように思います。
その後、チーム成績は下降線をたどり、2017年にはクラブ史で初めて、J2での戦いを強いられますが、かえってファンの結束を高める結果となり、今や4万人を越える豊田スタジアムのキャパシティが埋まるところまで、ようやく辿り着いたのです。
※2019/08/12追記
今現在の名古屋グランパスのミッション・ステートメントは『ホームタウンの全ての人々に「グランパスでひとつになる幸せ」を提供します。』となっています。
ボランティアの取り組みについて
以前の名古屋グランパスは、ボランティアを使うことに消極的で、チケットのもぎりやゲートの案内まで、すべて有償のスタッフで試合運営を行っていました。
グランパスがボランティアを本格採用し始めたのは本当に直近で、2018年のことになります。
今や1試合で4万人が集まる事業規模になり、中小企業体であるクラブの職員だけで、個々のお客さまの『存在目的』に耳を傾けることは困難なことです。そこで、試合会場でのボランティアの方々の果たす役割はとても大きなものになってきています。
昨日見た試合では、最寄り駅近辺の歩行者天国内で、『名古屋グランパスと学ぼうサッカー防災「ディフェンス・アクション」』というイベントが行われていました。
豊田市や地元12の自治区の協力のもと、地域の一般社団法人が主催するイベントでしたが、会場で集客したり、アトラクションに着くスタッフには、クラブボランティアも機動されています。
以前は、試合会場に向けて人々が通りすぎるだけだった街のメインストリートに活気が作られるようになって来ました。
クラブのなかに、ホームタウン担当の職員はいても、この規模のイベントを常に自前で運営していく体力はなかなかないものです。地域行政や団体が積極的にスポーツの価値を利用した取り組みを形にしてくださること、クラブにとって大きなメリットなのです。
スタンプラリーのポイントが11ヶ所あり、大学生か専門学生と思われるボランティアスタッフが暑さのなか懸命に接客している姿には心打たれました。
こうした一つ一つの体験が、ファンの満足を作り、クラブの規模をコツコツ育てていくのです。規模が大きくなればなるほど、関わる人々が増えていかなければ、『存在目的』で繋がりあう関係は構築できないのです。
まだ、名古屋グランパスでは、歴史の浅い取り組みですが、会場の雰囲気を以前よりも数段楽しいものに変えてくれているのが、ボランティアスタッフの働きといえましょう。
自分たちの使命を貫くことがすべて
Jリーグのなかで、こうした動きを先導してやってきたとは言い難いクラブではあるものの、徐々にクラブのミッションを明確にし、発展の姿を見せているのが名古屋グランパス。
社長以下、職員スタッフ、ボランティア。それだけでなくクラブの構成員であるファミリー。一体となって、それぞれが『存在目的』を通いあわせて進んでいくこと。その先に益々の発展が待っているように思います。
我が地元のクラブとして、今後も継続的に追い続けていきます。
そして、スポーツボランティアのことについては、当連載の【第2章】でも深掘りしていく所存です。
暑さで若干体調を崩しましたが、次回は隣県の岐阜について、続けて投稿予定です。お楽しみに。
スポーツエッセイスト
岡田浩志
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