世界へ飛び立つ11歳
僕は小学生時代を、コンビニもスーパーもないド田舎公立小学校で過ごした。
何も知らない町でぬくぬく育っていたのだけれど、小学3年生の冬に母が担任に「この子を学校で終わらせるにはもったいない。塾に行かせてあげてください」と言われたらしく、春休みから入塾することになった。
今思えば、その先生に出会っていなければ、今の僕はきっとなかっただろうと思う。その先生はきっと僕や母に言ったことも、僕の存在さえも忘れただろうが、本当に感謝している。塾という選択肢を知らない世界線で、あの田舎に住む僕はどう過ごしていただろう。
僕が教師になろうと思ったきっかけの1つがこれだ。教師のその声掛け一つが、子供の人生を大きく左右することがある。僕自身、生徒として過ごす中で、ありがたいご縁もあれば、文字通り反面教師にしたい人もあった。ならば自分はそんなありがたいご縁を少しでもたくさん作れる存在になりたいと思った。
今年担任をしている児童に、最近「来年から日本を出ようと思う」と言うようになった子がいる。
自分からすると考えられないことだ。小学生で親元を離れる?しかも日本を出る?それを自ら志願している?そんなことがあるのか?果たして可能なのか?
どうやら話は本格的に進んでいるらしく、保護者からは必要な書類等の話まで出始めている。
昨日保護者と直接話せる機会があった。保護者の方は「実は先生のおかげなんです」とのこと。僕は何も覚えがなかった。
保護者の方曰く、僕はその子と先日、返ってきた業者のテストの振り返りをしながら、志望校とこれからの話を熱く交わしたらしい。その話の中で、その子は自分の思いにはっきりと気付くことができたらしい、とのこと。その日からというもの、その子が熱く自分の思いを語ってくるので、保護者としても動く決意が出来たらしい。
人は時に、特別なことすらも忘れてしまうことがある。そう考えると、今回話にあがった、業者テストの振り返りなんかも多くの子達にとっては取るに足らないことなのかもしれない。
でもちゃんと覚えてくれている子もいる。それは、きっと彼らの中に意味を持って存在しているからなのだろう。そして、こんな瞬間があるからこそ、教員はどんな時も子どもと真摯に向き合い続けるのだろう。
自分の常識の通用しない、子どもの描く世界のなんと面白いことか!その子との限られた時間を大事に過ごしていこうと思います。
ここまで呼んでくださった皆さん、ありがとうございました!
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