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また空が広くなった

11月9日(土)
朝、目が覚める。鳩のまろやかな声にうっとりする。ぽろっぽーぽろっぽー。
むくりと起き上がる。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

ウーちゃんとルーちゃんの水槽の水を換える。

修一郎の食事をお弁当仕立てにして ふたつ作っておく。

絵本の下描きの準備をする。

午後、ごはんさんが もみの木の枝を切ってくれる。
脚立、ガソリンを入れるプロ用のチェーンソー、高枝チェーンソー、ロープを使う。

「みるさん、見て。」ごはんさんが言った。

見上げると、カラッと抜けた高い空にトンビが 2羽優雅に円を描きながら飛んでいた。そこへ大きな鷹が 2羽飛んできた。頭と尾と広げた羽の内側が白い。すごくきれい。仲良さそうに飛んでいる。

そこにまた別の猛禽類が飛んできた。大きくて黒っぽい。鷲かな、トンビかな。みんな円を描きながら悠々と飛んでいる。すごい迫力。すごくかっこいい。自由な感じがする。

「豪華絢爛。」と、ごはんさんが言った。ぴったりの言葉だ。

今日も、ぐいぐい太い枝を切ってくれる。
木に登り、重いチェーンソーで切ってゆく。落とす場所も考えて微妙に角度を変えながら切っている。

お隣のパジャマさんが出てきた。

「本当にすごいですね!」いっしょに観覧する。観覧という言葉がぴったりだ。

もみくちゃに絡まった背の高いもみの木の枝がどんどんスッキリしてゆく。

音を聞きつけたOさんが道からこちらを見ている。

「杉ともみ切ってくれてるんです〜。」と、私。

「うん、さっき屋根の上から出てるもみの木が揺れよったけん見に来たと。」と、Oさん。そして、

「誰が切りようと?」と、聞いた。

「ごはんさんですよ。」と、私。

「えぇっ!そうなん!?ごはんさんが。すごいなぁ。植木屋さんは無理って言ってたし、どこに頼んだんかなぁって思とった。え〜。さすがやなぁ。」

Oさんも観覧に加わった。
みんなで わいわい言いながら観る。

その中で、ごはんさは もくもくと作業をしている。
幹のように太い枝にロープをかけてゆく。パジャマさんの敷地に落ちないように。みんなでその様子をじっと見守る。

50ccのチェーンソーのエンジンをかける。バイクみたいな音がする。片手でチェーンソーを持ち脚立に上る。エンジン音を轟かせて枝を切ってゆく。木屑がものすごく飛んで視界が遮られるほどだ。すごいパワーなのだ。

あっという間に枝は幹から離れ真下に落下。地面ギリギリのところでロープで吊られる状態になった。

「完璧!!」と叫んでみんなで拍手。ぱちぱちぱち。

また空が広くなった。
裏庭に出るたび、長年どうしようかと思っていたことが、ごはんさんのおかげで あっという間に解決した。

枝を切ってくれてありがとう、ごはんさん。
枝を切らせてくれてありがとう、木たち。

クローバー畑の奥に、こんもりと小さな森ができた。
みんなその量にもびっくりしていた。

背が高く、うねうねとした枝の多い細めの木を1本残して終了。この1本は後日、別の道具で枝を落としてくれる。

そして、雨漏りをしている屋根も見てくれた。

起きていた修一郎に話すと、
「ごはんさんに、くれぐれも ”ありがとう” と言っといて。」と言った。

ごはんさんと こもれびの森に行く前に、少し遠い場所にあるいつもの天ぷら屋さんに行く。

「白舞茸おいしい〜。」と、何度も言う。

ごはんさんが ふふふと笑う。

「おいしいね。」

「うん、おいしい。」

「幸せ。」

「ほんと幸せ。」

ふたりで何度も言いながら もぐもぐ食べた。他のお客さんも幸せそうに もぐもぐ食べていた。

衣を少し剥がしながらだけど、ぜんぶ塩だけで食べるけど、食べれないものを食べてもらいながらだけど、とてもおいしい。

アレルギーになってから、もう今後、外食はできないだろう。と思っていた。発症後 初めての外食はとても緊張した。ごはんさんが連れて行ってくれるようになって少しずつ外食できるようになった。とてもうれしい。

こもれびの森に寄る。
ニャーニャー言いながらミケちゃんがやってきた。ふわふわの毛を撫でる。

用事を済ませて帰路に着く。

お買い物をする。修一郎に頼まれていた おまんじゅうが無かった。別のものを買う。ごはんさんが別の店に行こうと提案してくれて行ってみる。たくさんあった。カゴに入れる。

家に帰り着く。

夜、庭に出る。
ぽつりぽつりと星たちが優しく煌めいている。素敵だな。

夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。

今日もいい一日だった。

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