お粥やの物語番外編 第3章1-3 謙太の呟きと神さんたちの内緒話

【賢者の言葉】
「夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる」

ウォルト・ディズニー


【謙太の呟き】
夢は追い続けたい……。
でも、いま僕が目にしている光景は夢であってほしいです。
そして実現しないでほしい。

だって、そうでしょ。
夜中に目を覚ますと、自分の部屋に見知らぬ他人が我が物顔でいて、怪しい笑みを浮かべているんですよ。
それだけじゃない。四人は押入れから出現したんです。
どう考えても、まともではない。きっと彼らは妖怪か幽霊です。

二人の老人なんて、意地汚い顔をしていましたよ。道端に飴玉が落ちていたら、絶対に拾って舐めまる連中です。砂で汚れていても気にしない。犬の糞が付いていて食べるかもしれません。
飴玉と同じように、きっと僕を食べるつもりです。

【神さんたちの内緒話】
「意地汚いとは失礼な……」
「本当ですよ。私は落ちている飴を拾って食べたりしません」
「こんな奴、家から追い出せばいいんだ」
「河さんの意見に賛成です」
「珍しく、山さんと意見があったな」

納得したように頷き合う、河さんと山さんを冷たく見ながら、レオタード姿の女性がピシャリと言った。
「彼を見つけて来たのは、あなたたちでしょ。もし、彼が役立たずだったら、私たちはどうなるのよ。二人に責任を取ってもらえるのかしら」
「そうだった……。つい熱くなって忘れていた。だが、最初に奴に唾を付けたのは山さんだ。責任と言うなら、山さんに取ってもらうのが筋だろう」
「そうしてあげたいのは山々ですが、連帯責任ですからね」

「連帯、連帯……」
楽しそうにそう連呼する、おかっぱ頭の少女を眺めながら、河さんが舌打ちをし、山さんが肩を落とした。
レオタード姿の女性が吐いた湿った溜息の音が、いつまでも室内に響いていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?