東京から岩手・西和賀に「移住」した理由
先日から、岩手県・西和賀町(にしわがまち)に中学生の息子と2人でお世話になっています。
期間は2週間。空き家を活用した「移住体験住宅」で暮らしながら、西和賀に暮らす友人夫妻のカフェで息子はお手伝いをさせてもらい、私はコワーキングスペースをお借りしてリモートで仕事をしています。
東京から西和賀までは、新幹線や在来線を乗り継いで4~5時間くらい。
それなりに長い旅でしたが、ここまでたどりつく道のり(Life journeyの意味で)も長かった気がします。
ここからは、西和賀で過ごしたいと思った理由や、私なりに感じた町やひとの魅力、これからのことを気が向いたときに綴ってみたいと思います。
学校に行かなくなった息子との日々
この春に中学生になった息子は、入学から1ヵ月ちょっとで不登校になった。
新緑の季節になっても制服にほとんど袖を通すことなく、朝から晩までの多くの時を家で過ごすように。ゲームをしたり、動画を観たり、SNSを楽しんだり。買ったばかりの教科書もただの山積みの置物となった。
最初はそんな息子に不安を覚え、私もキャパオーバーのストレスを家庭で抱えていたこともあり、つい「今日は学校行かないの?いつ行くの?」と声を荒げることもあった。
でも、泣きながら「行きたくないんだよ」と訴える息子の姿に、辛い思いをさせてまで行かせてはいけない、と我に返り、以後は何も言わないことにした。家でのんびりと笑って過ごしてくれるだけで十分、と。
内と外の世界をつなぐには
一方で、学校に行かないとなると、あたりまえだけどずっと家にいる。
目覚めるとゲームと動画とSNSのエンドレスなループで、気が付くと横になったまま日が暮れている。
きっとそれは息子にとって何かを回復させるための必要な時間なのだろうと思いつつ、少しだけ外の空気を吸ったり、体を動かしたり、誰かと話をしたり、そんな経験も本人が希望すればだけど、できたら良いのにな、と思うようになった。
「住みこみカフェ手伝い募集」
そんなとき、友人夫妻がカフェのお手伝いを募集しているとSNSで知った。
西和賀町で生まれ育った瀬川然さんと、東京から移り住んできた瑛子さん。
同じ高校に通っていた瑛子さんと私は、15歳からの友人でもある。
そんなご縁で、以前にも西和賀に息子たちとお邪魔したこともあった。
息子は、不登校になってからも料理は好きで、たまにランチを手作りしてくれたり、忙しい私に代わって晩ご飯を用意してくれたりしていた。
とはいえ、当時の彼はエネルギーもなく、ベッドで横になっている時間も長かったので、さりげなく「西和賀で、カフェのお手伝いしてみる?」と声をかけてみたところ、「行ってみるわ!」とむくっと起き上がった。
予想外の前向きな反応に驚きつつ、自分から「何かをしたい」と思い立ったことがちょっぴり嬉しくもあった。
ただ、体力が落ちてることは間違いない。
秋の紅葉シーズンは、カフェ経営にとって大切な繁忙期。はたして「自称・三年寝太郎」の息子に朝から夕方までの立ち仕事が務まるのか不安を抱きつつ、瑛子さんに相談したところ、二つ返事で快諾してくれた。
それだけでなく、中学生が来てると知ったら近所の仲間たちが喜んでやってくるよ、と。
ヤギの世話も頼まれたり、演劇イベントに誘われたりするかも、と。「え、ヤギ?演劇??」とはてなマークとワクワクに包まれながら、新幹線のチケットを取った。
いざ、西和賀へ
東京駅から東北新幹線「はやぶさ」に乗り、途中の仙台で「やまびこ」に乗り換え、北上駅で下車。ここで在来線の北上線に乗り換える。
待つこと1時間、おもむきのある1両編成の列車がやってきた。
「存続の危機にある」と聞いていた北上線は、学生さん、買い物帰りの地元の人たち、観光客などでにぎわっていた。
市街地を抜け、山深い森のなかを進むうちに、不安そうな表情になっていく息子。
そう、西和賀に行くと決めてから1ヵ月ほど、「熊が怖い」とずっとびくびくしていたのだった。
今年は東北地方で熊の被害が相次ぎ、西和賀町でも過去に人身被害があったそう。
そんなニュースを何度も見て、息子の頭のなかは熊でいっぱいだった(私は息子の体力と気力が持つだろうかと不安でいっぱいだった・・・)
不安を和らげてくれたお出迎え
北上線の車内で親子で不安に揺られながら、さあもうすぐ西和賀に着くぞ、という直前に、うれしい瞬間があった。
廻戸川(まっとがわ)にかかる鉄橋を列車が通過するとき、ふと車窓に目をやると、以前の西和賀訪問でお世話になった瀬川強さん・陽子さん夫妻が思いっきり手を振ってくれていた。
西和賀の自然を撮り続ける写真家でもある強さんと、自然観察会を共催する陽子さんは、西和賀の森を知り尽くしている。
息子たちが小さい頃に案内してくれたブナの森へは、「今からお邪魔しまーす!」と森に棲む熊たちに届くように挨拶をしてから足を踏み入れた。
「陽子さんと強さんが手を振ってくれてたよ」と息子に伝えると、安堵したような表情に。
「森に生きる命とともに、ひとも生きる」
そんな強さん・陽子さんの姿を思い出したのかもしれない。
そんなこんなで、不安とワクワクを抱えて、西和賀「ほっとゆだ駅」にふたりで降り立った。
(ほっとゆだ駅は、温泉直結のユニークな駅。駅舎で本格的な温泉に入ることができます。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?