終電からモーニング
以前女友達と「クリスマスの夜に渋谷を散歩する」という遊びをした。
クリスマスの夜なので、25日の夜。23時あたりになってからもう何すればいいのか分からなくなって(意地でも帰りたくなかった)、ヤケクソになりもう2人でホテルに泊まるか?!と意気込んだものの、そんな夜に部屋など空いてるはずもなく、途方もなく渋谷を彷徨っていたら24時になってしまった。
日を跨いだ途端、続々とトラックが商業施設の前に止まっていく。デカいクリスマスツリーがテキパキと飾りつけを脱がされ、横に寝かされ、ただの木になってトラックに積まれていく。さっきまでクリスマスだった街があっというまに正月に向けたディスプレイだらけになっていった。
宿泊先を探していたがその渋谷の早着替えがおもしろすぎてしばらくその様子を見て歩いたあとタクシーに乗り、結局私の家の狭いベッドで2人で眠った。
その話を別の女友達にしたら「やりたい!たのしそう!」と言ってくれたので、今度はクリスマスでもなんでもない日に終電後集まって、散歩をすることになった。
とくになんの決まりもなく、歩き続けて限界になったら家に帰ろうということだけ決めて歩き始めた。お店が早く閉まるはずなのに、人はそれなりにいる。みんなどこで飲んでるんだろうと思っていたら地べたで缶ビールを開けてる人たちがいたので、なるほどね〜と思った。
飲み屋街を通りすぎると看板は出ていないものの、店の2階から笑い声が聞こえたりした。
渋谷駅周辺は終電後、工事がはじまりそこらを歩いている人よりも工事のおじちゃんたちのほうが割合的に多くなる。昼間では入れない場所に人が集まっていて、恐竜みたいな重機が動き出す。その様子を一通り見た後渋谷駅から少し離れることにした。
昼間であれば広告が流れる大きな液晶に、一文字ずつ黒背景に文字が映し出されている。気になったのでしばらく眺めていたら最後にメッセージの全文が映されるみたい。どうやらその様子がYoutubeでライブ配信されており、自分の投稿したメッセージが見られるというサービスだったらしい。ほとんどが好きな俳優に向けてのファンからのメッセージだった。
宮下パークまで来た。本当に行くあてがないのですごくフラフラしている。
さらにフラフラと歩き、過ぎていく居酒屋群を見ながら「待ち合わせでここ指定されたらどうする?」「帰るな〜」とか言いながら歩いていると前から外国人女性が近づいてくる。英語はわかんないけどおそらく「火、ない?」的なことを聞かれたのだと思う。深夜に他に誰もいない状況で突然話しかけられるとすごくびっくりすることに気付きながら、「ないです!ない!ごめん」と言いながら私たちは通り過ぎて行った。(こういう時に英語が話せたらいいですね〜)
とりあえず原宿のほうまで歩くか、となりそちらの方面へまた歩き始める。
守られすぎ鉄柱や道のど真ん中に突然現れるコンテナを見ながらキャッキャと歩いていたが、「やっぱりこの時間はコンビニのホットスナックが食べたいよね」という意見が合致し、コンビニに行くことにした。
なんだか見た目がおかしいと思ったらドラクエとコラボ中の店舗らしく、入店するとなんらかのセンサーに反応し、めちゃくちゃデカい音でレベルアップの音を聞かされる。深夜に聞くデカいレベルアップの音は全然うれしくない、何もしてないし…
深夜帯なのでレジ前のホットスナック棚は空っぽか?と思いきや結構充実していたのでお互いにからあげみたいなやつを買った。
私はかにぱんが大好きなので大きなレベルアップの音で一瞬不機嫌になったが、ここで機嫌がよくなった。
店を出て(またデカい効果音を聞かされる、今度は移動時の「ザッザッザッ…」の音)、近くの座れるところでからあげを食べていたら、向こうから男性3人組が近づいてくる。そのまま通りすぎると思いきや「なにしてんの?」と話しかけられたので、「散歩」「なに食ってんの?」「からあげ」とだけ会話して、3人は去って行った。深夜になると何故みんなポケモントレーナーみたいに話しかけてくるんだ?そう思いつつ食べ終わって出たゴミを捨てにコンビニに戻りに行く(ゴミ箱は店内にあるのでまたデカい効果音を聞かされる、今度はルーラの効果音)。
また歩き始めて国立代々木競技場まで来た。
深夜に見上げるこの建物は本当に宇宙船のように見える。
しばらくの間「すごいよ…かっけー…なんでこれが作れる?」という話をしながら写真を撮った。建築の知識があればよりおもしろくこの建築物を見られるのだろうな〜
代々木公園を出ると遠く向こうの方に原色で色とりどりの文字が煌々と光っているのが見える。この距離からあの大きさで見えるってことは相当デカい。(写真撮り忘れた)「色的にトイザらスじゃない?」と言ってみたけどこんな場所にそんなトイザらスはないはず。とりあえず近付いてみるかとなるも対象が大きすぎて一向に近付けない。そうこうしていると原宿についてしまった。
歩道橋を登ったところで、「これって…ルイ・ヴィトン、じゃない…?!」と大きな色とりどりの文字を理解した。
人がいる!
時刻はもうすぐ2時になる。そんな時間にこんなに煌々とした、まぶしすぎる光を浴びながら粛々と作業をしているおじさんたちに心を奪われてしまい、しばらくそれを眺めていた。
鮮やかに照らされる足場と作業員のおじさん、深夜2時の静けさ、電車ですぐには家に帰ることのできない私たちの宙ぶらりんな感じ、それらが合わさりこの事象はなんだか脳にものすごい刺激を与えたような気がする。何がとは具体的に言えないが…
原宿の竹下通りに着く。
ラフォーレの非常灯が素晴らしい照明になって建物を照らしていた。
周りが暗くなってはじめて「結構デカくて怖い木」に気付く。
原宿といえばのクレープ屋さんも、周りに誰もおらず閉園後のディズニーランドのような雰囲気を出してくれており、かなりよかった。
昼間はよりキラキラの東急プラザ表参道原宿だが、電気がついていないほうが私は好みかもしれない。スペース・マウンテン感があってよい。
この日は「私が大の字で手を広げてそれを遠目から撮る」のが2人の中で若干流行っており、ここでもそれを実行した。
写真を見た友人から「炭鉱のドワーフじゃん!」という感想をいただいた。
真っ暗かと思いきや電気がついてるお店が結構あり、表参道あたりは明るかった。
どこも見応えがある。
人がいないので、このような「誰も登らないであろう階段」などという興奮ポイントにも立ち止まることが可能。
3時14分、青山あたりにたどり着いた。
………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!これは!!!!!
パーツごとほしい!!!!!!!すごいです。ここはお店やさんの前かと思うのですが、パーツ単体でもすばらしいのに、それらが組み合わさりさらにすばらしい構造になっています。左にのびる薄い階段も、半円で形成された1段だけの階段も、その階段を横からみた斜めに切られたような綺麗な白い輪郭線も、心許なさも、下へと続く階段との接触部分も、すべてがすばらしいです。興奮して写真をたくさん貼ってしまいました。この部分だけ家に持って帰れないでしょうか。無理でしたので写真をたくさん撮りました。
で、歩き続けるもまた途方もなくなってしまったので、とりあえず渋谷へ戻ることになった。
入られたくないことは分かるけど悪目立ちしすぎて逆に入りたさを演出させるロープ。
窓枠の丸よりも、光の丸が先に目が入ってくるのは夜ならではだと思う。
テクスチャが同じでゲーム的でよい。
渋谷へ向かっているととんでもない建物が目の前に現れた。
ひぇ〜〜〜
かっこよすぎる〜
1974年に竣工されたVILLA MODERNA(ビラ・モデルナ)という複合施設らしい。今まで渋谷を散歩したことがあったのに見落としており2人して驚いてしまった。その場で空室情報を調べたりしたがSOHO物件ぽいので私たちには住めないね、という判断に至った。でも住んでみたいな〜
渋谷に戻ると朝の4時。終電時と比べたら人が魔法で消えてしまったかのように誰もいなくなっている。静かな明治通りから外れた脇道を歩いていると、「ガコン…ガコン…」と不思議な音が聞こえる建物があった。
「ここから聞こえるよね…?」「なんじゃこの建物…」と言いながら訝しげに近づくも正体が分からず、明治通り沿いの方が正面なのではと思い回り込んで見てみることにした。
そこはEST渋谷東口会館というアミューズメント施設だった。聞こえていた音はボウリングの音だった。今渋谷で開いている娯楽的店があるなんて?!と驚きながら営業時間を見てみるとボウリング場だけ、朝の5時までやっているらしい。
ゲーセンやカラオケも入っているみたいだけど、ボウリング場だけが稼働している。そして実際に遊んでいる人たちもいた。渋谷という街に針を刺したかのように局所的で、静かにパワフルな場所を見つけてしまい、非常におもしろかった。
始発の電車が動き始めている。私たちはいつでも帰ることが出来るようになったが、ここまできたらどこかでモーニングをしよう!となるも歩き続けて少し疲れていたので、「とりあえず山手線に乗ろう」となった。
なんの目的もなく電車に乗ると少しだけ不安だ。どこかで降りなきゃいけないんだけど、降りてもなんの用事もない。なので私たちは「行ったことのない高輪ゲートウェイ駅に行く」という目的を乗車してから作った。
駅はめちゃくちゃ綺麗だったが、春先特有の変なおじさんが一人で大声を出していたので謎の緊張感があった。エンカウントしないように避けつつ駅構内を歩く。ハロオタの友人は隣で「高輪ゲートウェイ駅ができる頃には」を流しながら口ずさんでおり、楽しそうで笑顔になった。
一通り観察したのでまた電車に乗り、モーニングを食べるべく新宿で降りる。
サボテン。
置いていかれた人間のアイテムたちが妙に目立つ。いつの間にか日が昇っており、もう明るい。
鳩たちが我が物顔で車道でたむろしている。公園以外の場所で鳥が集まっているとなんだか不安になる。
Google検索でAR表示した猫みたいな猫がいる。
AR猫すぎる
動いてもARだった。
やっとお店の開く時間になったので、「珈琲西武」でモーニングを注文する。
上着を脱いではじめて友人がBEAMS Tの私のイラストが描かれているスウェットを着ていることに気付き、うれしくなった。
さすがにもう眠くなってきて、ぼんやりとしながらモーニングを食べていた。私たちの後に入店して隣に座り、pcを開いたお兄さんも寝こけていた。いい朝だった。
目的を達成したので解散した。
いつも行き来している街のはずなのに、ちょっとした旅行でもしたような疲労感と充足感だった。時間を変えて知っている街を散歩するの、おすすめです。暖かくなってきたので早朝散歩もいいでしょう。
おわり
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