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映画『天井桟敷の人々』はいいぞ

私の人生の映画の一つが『天井桟敷の人々』です。1945年に作られたフランス映画です。

ガランスという美女と彼女に恋したピエロ役者のジャン=バチストを軸に、ガランスの周りの不良の男たち、ジャン=バチストの周りの劇団員たちとの恋模様を通して十人十色の愛の価値観を描きます。

ただの恋愛ストーリーではありません。
愛の価値観が違うがためにすれ違っていく人々だらけで、恋愛はことごとくしょっぱい展開です。
群衆に消えるガランスと群衆に翻弄されるジャン=バチストのラストのシーンは重い感情が押し寄せます。
大好き。

この映画との最初の出会いは大学生の頃に太秦映画村に行って見つけたポスターでした。おそらく日本で作られた当時の宣伝イラストで、ネットの海では見つかりません。もう一度見たいな。
この時、ピエロの絵が描かれたデザインに惹かれてタイトルをメモしていました。

その後、深夜に偶然テレビで放送があり、この作品を初めて見ることになりました。
白黒映画に馴染みがなかったので飽きるかも〜と思っていたら、なんのその。3時間釘付けで見れてしまいました。
多分当時の私は作品のテーマを噛み砕けていなかったと思います。
ただただ漠然と“良い……”と感動していました。

この時の感動が深すぎて、数年間、再度鑑賞できなかったほど。感動が崩れそうで怖かったから。
しかし、数年後もう一度見た時、やはり感動しました。
何なら年齢を重ねたからか()、より物語を、テーマを、無常を味わえました。

それに色んなキャラクターが登場しますが、みんないいキャラクターなんです。

ピエロ役者のジャン=バチストはどうしようもなく庇護欲をそそります。
ピエロって道化者としてやホラー的な怖い姿だったり、色んな顔を描かれますけど、個人的には悲しみを抱えた存在としてのピエロが一番ツボにハマります。
彼はそんな存在です。
悲しみのイメージをピエロに持たせた最初の人物は、ジャン=バチストのモデルになった実在のピエロ役者だそうです。
色々調べましたが、こういう裏話含めて『天井桟敷の人々』は私の琴線を刺激してきます。


ちなみに最近のフランス人はほとんどこの作品を知りません。
好きな映画を聞かれた時にこの作品を伝えても「見たことない」と言われます。悲しい……。
ぜひどなたか、この記事を読んでくださった方に見ていただきたい作品です。


突然の作品語りでした。



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