#映画感想文 「道」食わず嫌いで、この年でやっと観て大泣き
フェリーニがイタリアの巨匠監督の中で一番、苦手でした。なんといってもビスコンティが大好きだったため、フェリーニの良さがわからず、アマルコルドとか、甘い生活と、退廃的で話が散文的でストーリーがないような。。と子供だったからわからなかったのかなと思います。
また、大道芸人の話というのはどうも苦手でした。物悲しい。さらにちょっと頭が弱い女の人が男に連れ回されるというのが、子ども心に観る前から悲惨すぎると思って見ることを拒否してしまいました。
しかし、 noteの映画評を発見して俄然みたくなり、ついに観ました。
結果、大泣きでした。
フェリーニの奥さんのジュリエッタ・マッシーナが素晴らしい。
演技じゃない。と思われる。無垢な魂が私たちの心に染み渡る。
頭がちょっと弱いから自分の不幸や理不尽な扱いに関しても、沸々と対応しているのかなと思うとさらにかわいそうだし、でも、やはり彼女は悲しいのです。
それが胸に突きささる。
そして、ザンパオを演じるアンソニー クイン。この人が私がこの映画を見なかった理由でもあります。なんだか、ガタイの大きな魅力のない男性に私には見えた。
しかし、彼も多分、「道」が代表作でそれ以外はあまりいい役に出会っていないように思われる。なぜ、アメリカ人の俳優がたくさんイタリア映画に出ていたのか、謎だし、イタリア語を話してたのかも謎ですが、彼の演技にも感動しました。
大道芸人のザンパオは二束三文でイタリアの貧しい娘を買いたたき、その子がなくなったら、今度は妹であるジェルソミーナを引き取りにやってきます。
ジェルソミーナは自分が売られていくということが理解できてないみたいですが、初めて会った粗野で大きな男に連れて行かれることになります。
大型の3輪車に乗せられて街を渡り歩く。
ザンパオにドラムの叩き方を教えてもらったり、ご飯も作れないので彼にご飯の作り方を教わります。
最初は毛嫌いしていたジェルソミーナも、彼を夫として愛していくことになりますが、野蛮なザンパオは彼女の気持ちはそっちのけで他の女と平気で寝て、彼女を街に置き去りにしたりとひどい仕打ちを繰り返します。
家出したジェルソミーナはある街で他の大道芸人の綱渡りをするイルマットに出会い、彼 からジェルソミーナに生きている上で大切なセルフエスティームを学びます。
「不必要な人なんて、いない。誰もが素敵な魅力を持っているよ」と教えてくれます。
そんな彼の出現にザンパオは、激しく嫉妬をします。
ザンパオとジェルソミーナはひょんなことから同じサーカスの団員として、一緒にサーカスで働くことになります。
このくらいからザンパオにとってジェルソミーナはとても大切な存在であることがわかってきますが、ここで純粋なイルマットとザンパノのいさこざがあって、二人は大喧嘩して別れる。
ここくらいからは、自分を持ち始めたジェルソミーナとザンパノの対立が生まれて、ふたりはどんどんとうまくいかなくなり悲劇がはじまります。
ここの部分は、マイフェアレディのような話でもあります。女は成長し、男は馬鹿なままでそれに気が付かず、追い詰められていくという話になっています。
そういう普遍的な話は別にして、ともかくフェリー二の映像が素晴らしいです。
今の映画でお金をかけてつくれるものではないのです。
黒澤とか、溝口とかの匹敵する映像美というのか、映像に感情があるので誰にも真似ができない。
語りはじめたらきりがないくらいの名場面の連続ですべてが絵画のような、計算尽くされた映像でありながら、それも感じさせない才能の凄さ。
それ以上に人間としての感情が蘇ってきて、こういう感情が自分にあるんだと思わせる力を感じる作品でした。
これからフェリー二を観たいと思っています。