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無償の代償

「お伝えすることは何もありません」 見知らぬ番号からかかってきた一本の電話。 息子が通っていた学校は中高一貫校で吹奏楽部は100人以上が在籍していた。 部員のほとんどが女子であり、なかなか気の強い女子たちを見ていた息子は、中学生から女の悪いところを見て育ったと思う。 かといって女嫌いになった訳ではなく、息子は女の子の友達がたくさんいた。 息子はそんな気の強い女子たちの中で部長となったのだ。 しかし、部員に対してあまり強く言えない息子は苦労しているように見えた。 そして

    • 妄想パスタ店 ニューオオクボ

      知らないということは恐ろしいことである。 私は大好きなJ-waveというラジオ局でお気に入りのDJの番組を車の運転をしながら聞いていた。 車の運転とラジオは相性が良い。 今日の仕事はきつかったな。 後ろのドライバーは焦っているな。 などの脳の情報とラジオの聞き流しはマッチする。脳の情報はラジオによって流されていくのだ。 今はDJとは言わず「ナビゲーター」というらしいが、お気に入りの男は私と同じ年頃でDJという呼び名にふさわしかった。 「この番組はニューオオクボの提供でお送

      • 神様からの贈り物(後編)

        ナミちゃんはとても70才に見えない。 身体が筋肉質で逆三角形だ。 以前はスキーの選手だったこともあるが、ナミちゃんは70才で現役の介護職員なのだ。 白髪を薄紫に染めたベリーショート。 ボーイッシュな服が好き。 シンプルなジーンズとセーターを着ているが筋肉質なので全くおばあさんに見えない。 ナミちゃんは自分より年下の人の介護をすることもある。 レッスン後のティータイム。 主婦の習い事はレッスン時間よりティータイムの方が長い。 私と同い年くらいの主婦になると両親の介護や病気や

        • 神様からの贈り物(前編)

          誕生日に短い小説を書きました。 「神様からの贈り物・前編」 春の陽射しが感じられるが北風が冷たい。 私の誕生日はいつも寒いなと独り言を言いながらフラワーアレンジメントの用意をする。フラワーアレンジメントを習い始めて20年近くになるが全く上達しない。 大好きなのに覚える気がない。 フラワーアレンジメントは全くの趣味の時間で心癒される時間を過ごしている。覚えて人に教えてみたいという気持ちが1ミリもないのだ。 今日はナミちゃんと久しぶりに会う日だ。 ナミちゃんとはフラワーアレ

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