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一人暮らしのいちばんの収穫は、「自分を大切にできるようになったこと」だった

24歳の冬、私は突然実家を離れる決意をした。
これまで、大学まで片道2時間かかっても、通勤に片道1時間半かかっても実家暮らしを決め込んでいたが、ある日突然一人暮らしがしたくなった。
というより、しなければいけない、と心が叫んでいた。

今までは、何かを思いついても躊躇って、考えて、出来ない理由ばかり探して逃げていた私だが、今回ばかりは違った。
思い立った翌日には両親と恋人に話をし、2週間も経たないうちに内見に行き、(これは運が良かっただけなのだが)その日のうちに仮契約まで済ませてしまった。
そして、その2ヶ月後にはその部屋に入居していた。
自分でも驚くようなスピードだったが、それほどまでに、早く自立したいという思いが強く沸き立っていた。



自立しなきゃ、と思わせたのは、やはり恋人の存在だと思う。
初めて出来た恋人はとても優しく、仕事のストレスで精神的に壊れてしまいそうだった私を、全身で包み込んで受け止めてくれる人だった。
そんな彼に、私は気付かないうちにどんどん甘えてしまっていた。
みるみるうちに依存してしまい、自分の予定は何があっても彼との予定を最優先するようになっていた。
そんな風にして頻繁に会っても、彼と会えた安心感からなのか、仕事への不安感とのギャップからなのか、一緒にいる時にとにかく涙が止まらないことが続いた。
彼と会って何をしていても、一日のどこかで感情が昂り、気付いたら涙を流していた。
そういう弱い自分がとにかく嫌で、彼を困らせていることが辛くて、また泣いた。止まらなかった。
そんな無限ループからか、彼との関係も少しずつギクシャクしていった。



距離を置くことも視野に入れて彼と話をした時、この先も一緒にいられるようにするにはどうしたら良いのだろうとぼんやり考えた。
少なからず彼に依存している自覚があった私は、とにかく彼から少し離れて、きちんと一人の時間を持たなければならないと思った。
でも、単に会わないようにするだけでは、気付いたら彼のことを考えて、嫌な仕事のことも頭をよぎって、ネガティブな考えが延々とスパイラルしてしまう。
そのために、何か夢中になれる物事が必要だと思った。

一人になって、夢中になれること。
それが、「新しく一人暮らしを始めること」だと思った。

そんな私の思いはそのまま「衝動」に変わり、私を突き動かした。
両親には驚かれたが、すぐに、良いんじゃない、と背中を押してくれた。
恋人もとても驚いていたし、最初は半信半疑だったそうだが、応援してくれた。そして、引越し準備もたくさん手伝ってくれた。笑

生まれてこの方20年以上住み続けた故郷を離れるのは本当に心から寂しかったが、それよりも、新しい生活への好奇心が勝っていた。
好きなインテリアや雑貨を揃えて、好きな料理を作って、好きなものを食べ、好きなものを見て過ごし、休みの日は好きな時間に起き、好きな時間に眠る。(しかも、通勤もこれまでよりずっと楽になる。)
考えるだけで、とにかくわくわくした。
衝動に従って、「自分のためだけに自由に動くこと」が、こんなにも幸せだなんて知らなかった。

私はもとからどちらかと言うと周りに合わせたり尽くしたりするタイプで、「自分のために」動くことが得意ではなかった。
でも一人暮らしをし始め、初めて「自分で自分を大切にする機会」を作ることができたんじゃないかと思う。
それは本当に大きな収穫で、とにかく毎日が大変だけど新鮮で、楽しくて、精神的にも安定していった。
その後、さらに仕事に忙殺されて倒れそうになる日々も続いたけれど、なんとか耐えきれたのは、このタイミングで自分自身の生活環境をある意味で整えられたからなのかもしれない。

恋人との関係も、私が一人暮らしを始めた頃からだんだん安定していった。
今ではまた付き合いたての頃のように仲良くできているし笑、休みの日に遊びに来る彼と一緒に家事をこなしたり、同じ食事をしたり、隣でテレビを見たりすることで、同棲の擬似体験のようなことも出来ている。
私のメンタルが安定したことが大きいとは思うが、こうやってほんの少しだけでも生活を共にすることで、なんだかんだやっていけそうだなとお互いが感じられたことも、良かったのかもしれない。

この先どうなるかなんて誰にも分からないけれど、今は心から、この人と一緒に生きていけたらいいなあと思っている。

人生初めての一人暮らし、始めてちょうど半年。
今日だってこんなに夜更かししてしまったし、家事もいくつかサボってしまった。
でも、無理せず自分のペースで、時にはそうやって甘やかしたりもすることで、自分の心を大切にできていると思う。

明日の朝は美味しいコーヒーを淹れて、のんびり一日をスタートさせよう。
それから、今日出来なかった洗濯と掃除をして、数日後の自分のために、好きな作り置きも作っておこうかな。


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