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この世がつまらなくてよかったなあ
こんなことを言うのも何だけど、現実に「幸せ」を感じにくかった。
目の前にいる人たちとの会話や触れ合い、広がる大自然や素晴らしい景色。
そんな「リアル」よりも、紙や音楽のなかに広がる空想の世界のほうが楽しかった。
現実がおもしろいと思ったことなんて数えるほどしかなかったと思う。むしろ、辛いことのほうが多かった。
言葉を選びながら話す帰り道や、優劣を決めるテストや、悪口が飛び交う教室の喧騒。
繰り返される毎日は、どう考えてもつまらなかった。
おもしろいことはいつだって紙の上か機械の中にあったし、目を通すだけで、耳に差し込むだけで、ちょっと操作をするだけで、自分をいろんなところに連れて行ってくれた。
でも、そうやってふよふよとしていると、「現実を見なさい」と言われて空想の世界を取り上げられることもある。
おもしろいゲームは手の届かない戸棚のうえに、ドキドキする少女漫画はゴミ箱へ。
ゲームも漫画も小説もドラマもアニメも映画も、「娯楽」とひとくくりにされて、一見ヒマを潰す無駄なものに見えるかもしれない。
でも、これらがなかったら、きっと人間は生きていけないと思うのだ。
もちろん、リアルに楽しみを見出せる人はいる。でも、見出せない人は、リアル以外のものに楽しみを見出すしかない。
どの時代にも、きっと現実を「つまらない」と思った人がいたからこそ、現実からかけ離れたおもしろいものがたくさん生まれた。
わたしは、そのおもしろいものに何度も何度も救われた。
人間関係がしんどくても、家に帰れば漫画が待っていてくれた。
ひとりの帰り道には、イヤホンを通じて大好きな歌が寄り添ってくれた。
娯楽は、誰かにとってはどこまでいっても娯楽でしかないのかもしれない。ただの遊びで暇つぶしで、人生になんの役にも立たないものかもしれない。
でも、娯楽は人を救う。
だから、小説でも、写真でも、アプリでも、音楽でも、今あなたが何か生み出しているのであれば、「いつまで遊んでいるの」とか「そんなお金にならないようなものを」とか、そういう声に耳を傾けないでほしい。
自分が生きているのはどうすっ転んでも現実なので、顔を上げて、耳からイヤホンを抜かなきゃいけないときもある。
けど。
そんな辛い現実を忘れさせてくれるものがあるから、人は前を向いて歩いていける。
だから、もっと作ってほしい。つまらないこの世を楽しいものでいっぱいにしてほしい。
それは無駄な産物じゃなくて、誰かの心の拠り所になるかもしれないから。
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