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食卓へ走って向かわなければならない

 正月でスパゲティが恋しい。もう1週間くらい食べていない。

 2022年、連れあいが急にイタリアンレストラン「Regalo」のオーナーシェフ・小倉知巳さんのYouTubeチャンネルにハマり、半年ほどパスタの腕を磨いてきた。少なくとも週に2度以上は作っていて、びっくりするほどおいしくなっていった。

 無料でこの講座を提供してくださっている小倉さんには頭が上がらないし、勝手に味がレベルアップしていくパスタをうまいうまいといただいているだけのわたしは連れあいにも感謝するのみ……

念願のRegaloにも食べに行きました

 本人は記録をしないタイプで、ここまでの道のりを残していない。そこで2022年12月に彼が作ったパスタをわたしが勝手に撮り、自分の感想や本人の意見を勝手に書き留めておいた。それらを振り返りながら、次のスパゲティの日を待ちたい。


アーリオ・オーリオ・コン・ポモドーロ

 口に入れるとにんにくと唐辛子がガツンとくるが、トマソー(小倉シェフが「トマトソース」をこう呼ぶのでわが家でも公用語)の旨味にたしかに支えられたひと皿。ふたりとも二日酔いの日、15時頃おなかが空いてきて食べるこれのうまさと言ったら……。主張しないイタパセ(イタリアンパセリ)も、あるとないとじゃ大違い。


貧乏人のスパゲティ

 バター、卵、チーズ、黒胡椒だけのシンプルパスタ。チーズの山に隠れた目玉焼きを崩しながら食べる。ソースに奥行きがない分、しょっぱくなりがちで味決めが難しい。パルミジャーノを削る場面に出くわすといやいや!ちょストップ!!って言いたくなるくらいの量掛けてるんだけど、食べるとちょうどいい。


しらすと豆苗のスパゲティ(ごま油)

 アーリオ・オーリオの要領で、オリーブオイルの代わりにごま油で作ってみたということだ。ごま油を使っただけで味付けは和風にされていないあたりが、あんまりほかで食べたことのない味を作り上げていた。本人的にもうまくできたらしく満足そうだった。


木こり風スパゲティ(風スパゲティ)

 ツナ・マッシュルーム・ミニトマト。木こり風スパゲティで〜す、と言って出してきたが「今日は玉ねぎがなくて……」「本来はオイルベースじゃなくてトマソーなんだ」と食べながら明かされてゆく。やや、それはもはや木こり風を名乗ってはいけないのではないか?しかし味はよかった。


アーリオ・オーリオ・キムチ

 ペペロンチーノ(唐辛子)の代わりにキムチを使用。賞味期限が迫っていたキムチと韓国海苔を消化するために作られたが、うまいうまい。時間が経ったキムチは酸っぱいから、油で炒めてまろやかにして食べたほうがうまいよね。


イカスミとみょうがのスパゲティ

 彼が作るパスタのなかで、わたしが2番目にすきなメニューである(1位は最初に紹介したやつ)。みょうがは元々あまり得意ではなかったが、これを経てすきになったほど。でも今作はパスタを茹ですぎたということで本人は不満げであった。


しらすと豆苗のスパゲティ

 具材は上と同じだが、今回は正統な「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」に則っている。前回時に買った豆苗をそのまま家で育てているので、最近は豆苗の出現率が高い。どうでもいいが前回より写真がおいしそうだ、太陽光で撮ったからかな。


 何度か撮り忘れてしまったので、12月は10食ほどパスタを作ってくれたと思う。彼の作るパスタは完全に家庭で作るレベルを超えてしまい、その辺のカフェなんかでもパスタを頼まなくなってしまった。いやあすごい、すごいぞ。他人ながら日々の積み重ねの力を噛みしめる。

 小倉さんのパスタは熱々で食べるのがマナーなので「そろそろできるよ」と声をかけられたら、わたしは走って食卓に向かわなければならない。そしてふたりで黙々と食べる。

 ただ小倉さんが作るひと皿〜70g程度のパスタとは違い、基本的にリモートワークのランチでふたり分、夜まで仕事を乗り切ろう!の量で作るため再現度が下がる……と彼は漏らす。わたしが不在の休みの日は、自分ひとり分を適量で作ってもっとも成功しているらしく羨ましい。

 昨年発売された小倉さんのレシピ本ももちろん買ったし、Regaloに食べに行ったときはキッチンの方をじいっと見すぎてご本人がテーブルまでご挨拶に来てくださった(お心遣いありがとうございました)。大ファンである。

 連れあいのパスタは今年もレベルアップしていくのだろうか。今後さらなるうまい思いができるかもしれないと期待しながら、わたしは食卓へ走る。

 小倉さんに、彼をパスタ道にお導きくださった恩返しをするには、金を稼ぎおしゃれをしてまたRegaloに食べにいくことしかない。今年も仕事をがんばるぞ〜っ!!

ご無理はなさらず、しかしご支援はたいへん助かります!