「絶望している暇はない」を読みました。
左手のピアニストである舘野泉さんの言葉が書かれた本です。
舘野泉さんは2002年に脳溢血で倒れ、右半身の自由を失いました。
その後2004年に左手だけで演奏するという左手のピアニストとして復活しました。
本書には舘野泉さんが(ご本人はそう思わなかったかもしれませんが)絶望の淵から這い上がり、復活するまでの思考や、人生を前向きに歩むためのヒントが書かれています。
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わたしが舘野泉さんを知ったのは、舘野泉さんがもうすでに左手のピアニストとしてご活躍されているときです。
わたしはその時、音楽ホールの受付窓口なるチケットセンターで働いていました。
その日は左手のピアニストのコンサートがありました。
わたしは、自分がチケット販売のためにチラシケースに貼っていたポップなどをみて、演奏家を支える仕事ができることに喜びを感じていました。
そのチケットセンターには、オーナーのコレクションであるCDがたくさん収納されている壁面棚がありました。そのCDは会員様にレンタルもされており、お客さまがレンタルにいらして、CDの棚からCDを数枚、受付窓口に持って来られました。
そして、その数枚の中から舘野泉さんのCDを1枚出して、「これを聴いてみるといいよ。」と、わたしにすすめてくださいました。パルムグレンの『粉雪』を、お客さまはこの曲がいいよとおっしゃっていました。
わたしは仕事を終えたあと、自宅でそのCDを聴きました。
それがわたしの「舘野泉さんとの出会い」です。
なんと儚げな自然の美しさを奏でたピアノ曲なのだろうと、はっとしました。この演奏を知ってから、わたしは舘野泉さんの演奏に夢中になり、あらゆるCDを聴きました。
ある曲には涙したり、ある曲には恐怖さえ感じたり、素晴らしい音楽の世界と出会いました。
左手だけなら自分にも簡単に弾けるかもしれないと思って、左手の楽譜も買って練習したこともあります。
でも、どうあがいても、舘野泉さんが演奏されているような音楽を表現することはできませんでした。ピアノ初心者として絶望を感じました。
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わたしは、家族と身体的な問題で音楽ホールで働くことを諦め、現在は保険会社でパート派遣をしながら、仕事と家庭と健康のバランスをとりつつ、ピアノを趣味としています。
舘野泉さんは、憧れのピアニストです。
わたしは、この本に書かれた舘野泉さんの言葉に励まされました。
「アスリートは、無名、有名を問わない。有名だから勝てるわけではない。
職人のように丹念に技術を磨き、体を鍛えたその先に、結果が待っている。」
「結局、ピアノはひとりで弾かなければならないのです。誰も助けてくれません。ピアノも人生もそう。歩むときは、ひとりなのです。」
わたしは落ち込むと誰かにひっぱりあげてほしいと思うこともありますが、環境が整っていれば、あとは自分次第なところもあります。
自分が立っていられるのは自分の努力があってこそです。
ピアノ初心者としても絶望している暇はない、日々研鑽です。
わたしはこの本を読んで、舘野泉さんの真摯な姿に背筋が伸びる思いをしました。
学びある素敵な本です。 https://amzn.asia/d/gTToGSu