6_幻

これは夢の中の出来事である。

夢というのは大抵覚えていないか、あるいは覚えていてもまるで現実味のない展開を迎える世界が広がっているものだ。
しかし、私の見る夢は現実的でハッキリとしたものばかり。
しかもそれは全て私が死ぬか致命傷を負うか、惨めな目にあっているのどれかだ。

例えば。
銀行で待っている時に、銀行強盗がやってきて、人質として捕らわれる。私は指示に従い、静かに椅子に座っていたのだが、突然犯人に「顔が気に食わない」と言われて、椅子から引き摺り下ろされ、こめかみに銃を突きつけられてそのまま発砲される。弾丸が脳内を通るような感覚。初めに額に強い衝撃を受けて、その後に痛みがやってくる。痛い痛いと思うように倒れて。
目が覚めた時は、息を切らしていた。

例えば。
反社の子分として働いていた私が、うまく先輩方のお酌が出来なかったときに殴られ、同僚の強面にトイレに連れていかれ、小便器に顔を突っ込まされて、そのまま舐めて掃除をしろと言われる。当然、後ろから小便をかけられながら。
目が覚めた時は、涙が流れていた。

例えば。
酷い風邪を引いて寝込んでいる私が幽体離脱をして、もう一人の自分がいる状態。神棚のある部屋に一人、「俺は死んだのか」と自分をみていると軍服を着た人が神棚の方へ引っ張っていく。私は何度も拒否をしたが、どんどん引っ張る力が強くなり、私は自分の身体に自分を重ね合わせた。
目が覚めた時、仏壇のあった部屋で寝ていた事に気づいた。

あのまま連れていかれたらどうなっていたんだろうか。

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