5_性

私が射精を恐れるようになったのは年荘の頃だった。

それまでは二、三日日に一度ほど義務的に行っていた。
弱冠の頃は気持ちがよい理由で射精をしていたが、頭の片隅では自分の遺伝子を枯らしたいという思いもあった。
射精する事で少しだけ「悪い種が実らなくなった」という自己満足が満たされた。

それが現在、歳のせいか薬の蓄積のせいか、射精後は耳鳴りと動悸息切れが頻繁に起こるようになってしまった。

それでも義務、止まらない。

以前のムラムラとした感情で行うのではなく、仕方なく想像して、状態までもっていく。
「さっさと使い物にならなくなってしまえ」という願いが叶いそうなのに、それはそれで「自分が男である理由」「生きる理由」「生物としての性」などなど生きる意味がなくなる恐怖も膨れ上がってくる。

実にならない空虚な白い紙に黒い遺伝子を捨てる。

何をしているんだろうか。

私は何を残したいのか。
私はまだ生きたいのか。

わからない。

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