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日本の歩き方《関西編》                第4回 海の京都

古都京都は完全なオーバーツーリズム状態、気候条件が最悪の夏場でも過密でなかなか動けない状態です。そこで、京都府北部の「海の京都」を紹介したいと思います。京都府もこの地域で「魅力ある観光まちづくり構想」を進めています。

舞鶴

舞鶴は軍港として発展してきました。日露戦争の迫る1889年に舞鶴鎮守府が設置され、初代の司令長官は東郷平八郎さんです。東郷邸は現在、舞鶴地方総監部会議所として使用されており、見学は月2回の日曜日に限定されていますので、訪問の際には注意してください。

旧海軍の倉庫群を再生した赤レンガ倉庫

舞鶴は東舞鶴と西舞鶴に分かれており、東郷邸赤レンガ倉庫舞鶴湾クルーズは東舞鶴になります。赤レンガ倉庫は旧海軍の倉庫群で、現在は『坂の上の雲』などの映画のロケに使われるほか、「赤レンガ工房」「赤レンガ・イベントホール」や土産物を販売する「まいづる智恵蔵」として再生利用されています。

5号棟「赤レンガ・イベントホール」内のカフェ。海軍カレーも食べられます。

赤レンガ倉庫街のすぐ横からクルーズ船が1日3回運航しており、自衛隊を退官された方に詳しく説明いただけます。

舞鶴湾内のクルーズ

舞鶴は第二次世界大戦で海外に残された日本人を迎えるのにも重要な役割を担いました。その地理的条件によってシベリア抑留者の引き上げ終了の昭和33年まで使命を果たしました。舞鶴引揚記念館にはシベリアでの厳しい生活の様子が展示されています。

舞鶴引上記念館

東舞鶴での観光を終えると、西舞鶴に移動しましょう。車を利用の場合には途中に五老スカイタワーがありますので、そこから舞鶴湾を展望することができます。

五老スカイタワーからの展望

西舞鶴の「とれとれセンター」では海鮮の食事が最高です。初めての人は注文の仕方が難しいかもしれませんが、魚介類を売る店で「この魚」と注文して、「定食にするから焼いといて」と断っておいて、別の定食屋さんで「ライスとみそ汁」のセットを注文して、センターの中央部にあるテーブルの上で両方を一緒にして食べます。

とれとれセンター内の鮮魚屋さん

ここで一息入れておいて、食後にセンターの前の国道127号を東の方に約1.5㎞歩いていきましょう。伊佐津川のすぐ東に東洋のベニスと言われる吉原入江があり、日本の漁村原風景が残っています。著者は吉原入江の正確な位置が分かっておらず伊佐津川のところで力尽きてしまい、残念ながら写真がありません。

伊佐津川の風景

伊根と間人

丹後半島と言えば伊根舟屋群。二階建ての漁家の1階が漁船を収容するスペースとなっており、この地域独特の景観を作り出しています。ここは、NHK朝ドラ「ええにょぼ」の舞台となったところでもあり、ゼミの実習では伊根町の町おこし担当の方々に大変お世話になりました。伊根の水産物では定置網による「伊根ブリ」が最も有名ですが、ぶるさと納税返礼品に「するめ一夜干し」などもあります。

伊根の舟屋群。すぐ漁に出られます。
戸田菜穂主演の「ええにょぼ」
伊根町役場での実習

伊根に来るには、この地域の玄関口である宮津市道の駅にあるミップル前から観光船が出ていますが、伊根に着いてからの足が困るので、できるだけ車で伊根まで来て、地元の観光船に乗るのをお勧めします。

丹後半島をぐるっと一周すると、新井の棚田袖志(そでし)の棚田など、農業の絶景も待ってくれています。また、海岸沿いだけでなく、半島内陸部にも畜産景観と言える碇牧場があります(残念ながら写真を撮りそびれてしまいました)。ゼミ実習では、この牧場の近くの森林公園スイス村の「風の学校」に泊まりました。9月上旬でしたが、朝は寒かったです。

袖志の棚田の案内
新井の棚田

丹後半島の北側に回ると、まず「間人」というヘンな地名が目に入ります。「間人」(たいざ)で最も有名なのは間人ガニ。これは超高級なブランドガニです。「間人」を「はしひと」と読むと孝徳天皇の皇后となり、日本史では飛鳥宮から難波宮を経て近江大津宮に遷都する時代に当たります。

間人皇后ゆかりの碑。蘇我・物部の騒乱を逃れてこの地(大浜の里)に逃れてきた。
乱が静まり、斑鳩に帰ることになるが、名残惜しい、ということが刻まれています。

風光明媚な地ですが、冬場の生活は厳しそうで、半島の西の方には夕日が浦という地名もあることから、淡路島や出雲で夕日を観光活用するビジネスに成功している(株)バルニバービさんに来ていただいて、京都市内のオーバーツーリズム解消とこの地域一帯の地域おこしをお願いしたいと思います。

冬場の生活は厳しそう。

水産業の支援

海の京都」は日本の主要な水産地域です。まず、京都府機船底曳網漁業連合会(舞鶴市)のズワイガニとアカガレイ漁業が日本で初めてMSC認証を取得しました。MSCとは漁業が持続可能な方法でなされていることを保証する国際認証(エコラベル)です。養殖ではASCというのが類似の国際認証となっています。MSCASCの認証マークが付いていれば、欧米の消費者は積極的に買ってくれます。皆さんもスーパーで魚を買うときに注意して見てください。

海のエコラベル(左が漁業対象、右が養殖対象)国際版
舞鶴水産物市場での実習

この地域には京都府の海洋センター(宮津市)があり、水産資源や海況の研究や先述のMSC取得支援など水産物の販路拡大に向けての取り組みを行っており、地域漁業の発展に大きく寄与しています。また、京都府立海洋高校(宮津市)も海洋工学や海洋資源のコースを作って水産業や航海に従事する人材を育成し、卒業生が活躍しています。その一方で、大学の水産学科の内容が実質的に「海の生き物学科」となって水産業や社会から遊離してしまったのが残念です。

京都海洋センターでの実習
京都海洋センターでの実習

ここまで「海の京都」を紹介してきました。この他に、京都府中央部に「かやぶきの里」や「芦生の森」のある美山地区(かつて美山町でしたが、今は南丹市の一部になっています)があり、手つかずの自然が残されています。読者の方の体験談をお待ちしています。


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