夢に見ていた大人とは? 堕落しちまった私とは?
野球選手やパイロット。芸能人や会社の社長。
そんな大層なものにはなれなくとも、
毎日スーツを着て電車に乗り、高いビルにオフィスを構える会社に勤められると思っていた。
ちょうど小学生六年生頃のことである。
この頃の年頃の子供は物心がついて時が経ち、
だいぶ世間のことが理解できるようになってきているものだ。
六年生というと中学入学を控え、そわそわとする時期でもあるだろう。
この頃の私には夢があり、また進学先の中学が荒れていることを考え、
歩いて3分の地元中学ではなく、
バスを2本乗り継いで行く国立の中学を受験したのだった。
結果は惨敗。あれほど勉強したのにの涙が止まらなかったものだ。
進学先の中学は案の定荒れていた。
時代錯誤のヤンキーがいたり、いじめの温床があちらこちらにあったり。
市内でも一番バカで問題のある学校だと噂が回っていた。
私も例外なくいじめの標的になり、殴られ蹴られ罵られ、それでも毎日学校に行ったものだ。
思えばこの頃から私の人生は狂ったのだ。
毎日毎日、いじめられると分かっていながらも、律儀に制服に着替えて学校に行く。
学校の勉強についていくため。
社会に置いていかれないため。
スーツを着る仕事をするため。
私は死にそうになりながら学校に通った。
それか約15年の時が過ぎた。私は30歳の中年になったのだ。
あの時の苦労があって、都内のデカいビルで働いている。
いや違う。
鬱になり、地元のスーパーでバイトをしている毎日だ。
朝7時に出勤し、11時には仕事を終える。
毎日安い酒を買っては飲み、飲んでは寝て過ごす。
こんな姿が私の偽りのない姿だ。
酒と抗うつ剤のせいで腹が出っ張り、立派な中年太りをしている。
手取りは7万程度で実家暮らし。
完全に負け組の人生だ。
どうしてこうなったのだろう。私は何に負けたのだろう。
毎日いじめっ子にも負けずに命懸けで通学した三年間。
いや、高校でも人と打ち解けられずにいじめのようなことがあったので、正確には六年間。
駄々をこねて大学へ行き、そこで鬱になって人生は終わりだ。
神に何度も祈った。
「助けてください」と。
しかし神は助けてくれなかった。
代わりに悪魔と死神が私をもっと下へと引きずり下ろしにきている。
同級生は皆結婚をし、私は一人チューハイを飲む。
なりたくない大人になってしまったのだ。
全てが夢で、夢から覚めたら小学生の頃布団の中だったらいいのに。
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