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#57 持っていますか?
富士山世界遺産協力金をお預かりする検収員の仕事は、富士山頂を目指す登山者に保全活動の重要性を訴え、募金をお預かりすることが第一の任務だが、御殿場登山道から山頂を目指す登山者の数は、他の登山道に比べて少ない。登山道御殿場口新五合目鳥居付近には多くの観光客が訪れる。だが、鳥居の前まで来ると辺りを見渡し、何もないので、やや落胆した表情を見せる観光客が多い。そんな時に「大石茶屋」までの散策を薦める。
「曇っていて何も見えないでしょ?」 「山の天候は一瞬で変わります。持っていれば大石茶屋に着く頃には、雄大なお山と遠くは房総半島まで見えますよ」と説明すると
「わたし、行ってみるわ」と大石茶屋に向かう。大石茶屋からなにかを貰っているからではない。せっかく御殿場口五合目まで来たのだから、素晴らしい眺望が観えるャンスを活かしてほしいからだ。
五里霧中状態から一瞬にして絶景を眼にした人、キリに阻まれ何も見えず、雨・風に打たれ人、様々だ。皆さん鳥居の下に帰ってきて 「やあ、ありがとう、いいものを見せてもらったよ」は持っていた人。「景色は見えずに雨にも打たれて散々だ」は持っていなかった人? でも皆さん笑っている。「じゃあこれはお礼だから」と募金してくれる。「ありがとうございます」登山者の募金以上に観光客の募金がうれしい。持っている人か、持っていない人か、ご自分で判断されているのだろう。持っていなかった人には、「良い思い出ができましたね。次はきっと持ってる人になれますよ。」と励まして見送る。
「持っていれば・・・・・・・」に責任感はない。