あなたのものがたり4
わたしのものがたり ジース
どうして、「相変わらず」てゆうたん?
姉川と妹川の血で、朱く滲む琵琶湖の湖岸に静かにジョーカーがたたずんでいる。黒い瞳で、こちらを困ったように見つめている。
…目をそらした。
「忘れてん。」
ウソ。そもそも、『相変わらず』っていったことを覚えてるから、『忘れた』なんて言えるんや。
「ホンマやで。ウソかも?どっちでしょう?」
ヒトを嘲笑う、厭な笑顔だ。
「ごめんごめん、怖い眼するなぁ。」
本当におびえているみたいだ。
「僕ら、C.A.R.Dsは、2015年に入ってからの記憶がないん。なんでかはしらん。」
ほんならなんで、『相変わらず』ってゆうたん。
「手ごわいなぁ…ぼくは、僕だけは、記憶が残っている。いろんなヒトにサイコダイブ…記憶を読み取ることで、断片的な記憶を統合してるから。」
「だから、結構古い歴史も知ってるねんで。90歳くらいのヒトに
サイコダイブしたこともあるねん。ヒトの古い記憶ほど、鮮明やな。幸い赤ちゃんにサイコダイブしたことはない。」
眉間にしわが寄っている。
それ、自分で望まなくても、触れたら勝手に記憶を読み取れた。で、最初にダイブした「カワジリコウサク」の何もできない能力を、読み取って、コピーした。そのおかげで、普段はカワジリコウサクのエラーを起こし、何もできなくしておいて、必要な時に、任意に触れたものの記憶が読み取れるってこと。で、合ってる?
ジョーカーは天真爛漫な笑顔で答える。
「ふふふ。」
答えになってないけど。
本当は、どんな瞳の色をしてるんだろう?…スキだけど、なんか、得体が知れない…厭なやつ?
…あたしは、これからこの人と喧嘩別れすることになるのかな。なんとなくそんな気がする。それが、あたしのものがたり。
「ほな、みんなに会いに行こうか。ありがたいことに、瞬間移動する能力は持ってないから、飛ぼうか。疲れたから、運んでぇさ。」
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