あなたのものがたり5
彼女とあなたのものがたり タナカさんとあなた
こわい
あなたはそう思った。ずっとその人はあなたを見ている。
シアトルにホームステイした。町の高校生1年生12人を選抜し、3週間のシアトルホームステイを、町が提供してくれた。
あなたはそのメンバーの一人だった。あなたは、ただのヒト。目立たない、平凡なヒト。
なぜなら、あなたは目立たないように生きてきた。
あなたは孤独だった。いつも独りぼっちだった。
祖父母と父母、妹と弟に愛される、ただの平凡なヒトだった。
あなたは高い知能を持っていた。
宿題を出さなくても怒られることはなかった。やらなくてもできるからだ。
いじめられた。人を見下した、ばかにした口調でよく話したからだ。
「しらんかったん?」
「そんなこともできひんのん?」
それが口癖だった。
テストはほとんどいつも百点だった。
だんだん、怖くなって、わざと間違えるようになった。
知っていても知らないふりをすることばかりだった。見殺しにすることもしょっちゅうだった。
妹が、暴力教師に、逆さ吊りにしておしりをたたかれているのが視界の隅に写ったときは、友人はこう言った。
「なんで泣いてるの?」
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