(短編小説)ジモンズに嫁いだ女
*過去に、ブログで紹介した短編小説になります💁
「愛があればいいじゃない」なんて、綺麗事だ。
俺の父も母も「普通の子ならいいじゃない。早く結婚しなさい。」と俺に言い続けてきた。
俺は、顔も決して格好良くないし。学校だって、エスカレーター式で入学した。就職は親のコネ。
安定職だけど、営業職で成績が取れなくて工場勤務に落とされた。本来なら、俺なんてとっくのとうにリストラ候補だったけど、親がいたから何とか縋りつけている。
実家がそこそこ裕福だった、って事だけが取り柄だった。
そんな俺に、やっと彼女が出来た。オレには勿体無い位性格も良くて、気立てもよくて可愛らしい人だ。
今までの彼女は高額なプレゼントを要求してきたが、彼女は何もねだらず「ただ、一緒にいてくれたらそれでいい」と言ってくれた。
俺にとっては自慢の彼女だった。ある日、彼女を親に紹介する事になった。
「どこに住んでるの?」俺の親が尋ねると、彼女は少し声を曇らせた。
彼女は、「あ、あっちの方で、一人暮らししています。」とだけ答えた。
「実家はどちらなの?」と親が尋ねると、「さらに北の方ですかね・・」と答えた。
「北ってどこらへんなの?」と更に親は尋ねた。
彼女は俯いて黙りこくったままだった。
彼女は、高校の頃からずっとバイトして自分で貯めたお金で大学もいったそうだ。
ずっとなりたかった看護婦にはなれなかったが、介護士の資格をとって頑張って働いてる。
成績だって、看護学校では1番だったそうだ。
それでも、ある理由が原因で彼女が看護婦になることは出来なかったのだ。
「両家顔合わせをする」という話になった時に、彼女が更に拒むようになった。
どうして?と、俺が聞くと「だって、私がジモンズ出身である事がバレてしまう・・・」といって泣きじゃくった。
育った環境だけで、なんで結婚出来なくなるんだよ。
日本は、昔皆同じ土地で産まれたはずだ。
どんな人でもいいといっていた癖に、うちの親は彼女がジモンズ出身である事がバレると猛反対した。
「勘当する」とまで言った。彼女は犯罪者なんかじゃない。同じ人間だ。
俺の親は、慌てて見合い写真を大量に俺に渡してくるようになった。
「あんた、結婚したいなら母さんに何で言わないんだい・・。
せめて普通の子ならいいけど、なんでよりによってジモンズの女なんだい・・・。
あの地域の子はね、血も濃いから危険な子供が産まれる確立だって高くなる・・・。あんたが苦労するだけじゃないか・・・。」
危険な子供が産まれるとか、偏見の塊じゃないか。
どんな健全な肉体の女だって、不健康な事をすれば危険な子供が産まれる確立は高くなるんだ。
彼女は、健康管理を考えた献立をいつも考えて俺に食べさせてくれる。
偏見と差別だけで人を見る事のほうが、ずっと残酷なんだよ。
俺は、彼女の手を取って駆け落ちすることを決めたんだ。
俺の家でも、ジモンズでもない。
俺たち二人が住む新たな楽園へ。
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