息をつく場所
三茶庵(編集者 注:三軒茶屋にあるみこと心理臨床処のカウンセリングルームの事。スタッフの間では、三茶庵という愛称で親しまれている)での過ごし方、の話ということでいいのでしょうかね。
三茶庵に入る時、たいてい私はなんとなくあたふたしています。副業の帰りに寄ることが多いので、まず間に合うように、それとご飯を食いっぱぐれないように。
三茶庵のドアを開けるとふっと香るクローブの匂い(虫除けのために部屋の隅に置いてあります)にあーただいまぁ、と内心で声を上げ、電気をつけて窓を開け、植物たちに水をやり、世話をして。
それから自分の腹ごしらえです。三茶には素敵なお店がたくさんありますが、如何せん、いいお店に入るとお尻に根が生えるたちなので涙を飲みます。
食事を食べ終わるというか流し込むと、匂いが残っていないか確かめつつクイックルワイパーをかけ、二人から「心理師じゃなくてユタなの?」と言われたアロマポットになんとなく火をつけて、ソワソワしながらクライエントさんを待ちます。
その後、クライエントさんをお見送りした後の方が部屋には長くいるし、三茶庵を庵らしく落ち着いて使っている気がします。面接を思い返しつつ記録を書き、また設えを直して、お茶を淹れて一息いれるのが至福。
この「息をつく」と言うのが大切なのだなあというのが三茶庵で得た知見でしょうか。
駆け出しの頃、相手の呼吸を見るようによく言われたのを覚えています。そういう視点で気になる子を見ていると、実際に呼吸が浅くて、背中が縮こまり肩はかたく凝ってつらそうにしていることが多く、おお、言われた通りだーと感心したものです。で、これを自分に当てはめてみるとこれがまた。ええ、これがまた。
肩甲骨あたりの強張りは恐らく年のせいですが、呼吸の浅さ深さは意識しないと分かりづらいのですが、お二方はどうでしょう。マインドフルネスという言葉が我が国の心理業界に定着してもうずいぶん経ちますが(なんだか偉そうだ)、つまりは呼吸と姿勢に気をつけようってことですよね?などと言ったら炎上するかなあ。
あとこの頃気になるのが声のあり方です。バーバルも大事だがヴォーカルも大事、というのも院生の頃聞いた話ですが、声の出し方や響き方への関心が、三茶庵を開いてからとみに強くなっている気がします。声と呼吸は表裏ですし、まあ当然と言えば当然なのですが。
さっきまでクライエントといた空間に一人残っていると、さっきまでここに響いていた声を思い出します。そしてその延長で、自分の出す音、部屋の時計の音、外の雑踏や軽い騒音、遠い空を行く飛行機やヘリコプターの音、そういったものが集中を乱すでもなくそこにあるのは心地よいなと思ったり。
居心地良すぎて自宅に帰りたくなくなるのが玉に瑕。カウンセリング+αの仕事のため必要最低限のものしか置いていないのがいいのかなあ。
あ、冷蔵庫の牛乳は好きに飲んでも良いですよ。
(C.N)