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4. CSか?ESか?ニワトリもびっくりな「優先順位」の話
こんにちは。眠りです。
◆ みんなで学ぶ「兆円の人」シリーズ
第3話目はCS(顧客満足度)とES(従業員満足度)のお話です。失礼、4話目でした。
今回またまた「兆円の人」の側近(以下、坊主氏)が登場します。この坊主氏、前も書いたかもですが「兆円の人」がこれまで一度もしたことのない「引き抜き」をした初めての社員さんだそうです。
へえ〜と思いましたか?
眠りは…思いました笑
ですのでね、速攻で聞いてみたんです。
何十年とビジネスをやってきてなぜ今まで引き抜きという行為をしてこなかったのかを。そしたら、こんな拍子抜けするお返事が返ってきました。「別に。たぶん会社として必要を感じてなかったからじゃないか?」
聞けば、会社が大きくなるにつれ、最初の頃は考えられなかったような一流大学の出や、すごい経歴の人たちが応募に応じてくるようになったそうで、それゆえ「必要がなかった」ということになるらしいです。それだけ会社が順当に、魅力ある存在になるまでに育ってきたという証なのでしょう。「発展」という言葉がまさにぴったりだなと感じました。
(ご本人は決して偉ぶったりはしませんが、きっと他人には見えないところで死ぬほど努力なさっているはずです。)
で、この坊主氏は常々「兆円の人」にお供してあちこち飛び回っておられるわけですが、元は金融のご出身です。面構えはかなりのイケメンで、大抵白い長袖シャツにサスペンダー姿なのです。背広は着ずに片方の手で持っておられるのが多かったように思います。これがまた、めちゃくちゃ様になるんですねえ。イケメンだからかな!きっとそうでしょう。世の男性が美人に甘いように、世の女性もまたイケメンに弱いものなのです。
眠りは毎回、密かに目の保養にしておりました。
そして中身もまた非常に頭の切れる方で、たまにお食事に誘っていただきましたが毎回、ツーといえばカーが3つくらい返ってくるほど回転の速い方でした。そんなツーカーカーカー談義の中で特に印象に残っているエピソードを「兆円の人」も交えた中でお話ししてみようと思います。
ある時、坊主氏がいきつけになさっているという中華料理店へ食事に出かけました。コース料理だったので、ご飯が出てくる間、まあいろんな話題がご飯より先にテーブルにのぼるわけですが。
この時は「CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)」についてでした。ちょうど眠り自身が会社の従業員を増やす過程で直面していた悩みが発端となっての話題です。
「会社にとってCSとES、どちらを優先すべきか」
眠りは断然「ESをまずは優先させよ」という意見でした。これは今でもそうなのですが、なぜそういう考えなのかというと、眠り自身の、日本にいた頃のOL経験に基づいてそういう思考に至っています。
当時、眠りはある三菱系損保会社の社員だったのですが、勤めている間に、こんな局面に遭遇しました。それは、
「保険会社による保険金不払い問題」
それまで保険会社、こと損保に関しては問答無用の殿様商売、契約者より保険会社が優位であるかのような仕事ぶりでした。
恐縮ながら、読者の皆さんも経験があるのではないでしょうか。
契約したはいいけど、何が使えて何が対象なのかが今ひとつわからない。忘れてしまったし、細かい文字の約款を読んだところでページ数も多いし、小難しい文言ばかりでよくわからない。だから困ったことが起こっても結局請求しないまま、なんとなく契約だけは「安心料」として続けている…
そこにこの「保険金不払い問題」ということで突如メディアをはじめ、世間から損保会社が叩かれに叩かれまくるという事態となりました。
契約者に対し、払えるものがあるのに、本人からの請求がないのをいいことにだんまりを決め込んでいるのはけしからん!という風潮になったわけですから、それって単にそれまでおかしかったことが正常化に向かっていただけの話で、むしろそれまでがおかしかったわけなのですが、少なくとも内部にいる人間からしたらそれまでの「常識」が崩れ去り通用しなくなる辛い時期でもありました。正直なところ、当時は理不尽にも「一方的に袋叩きに遭っている」ようにしか感じませんでした。
眠りは保険金額を査定、支払いする損害課という部署に所属していたので、モロにその影響を受けておりまして、契約者ご本人から請求がないけれど支払えるものに対し「遅延損害金」を1日単位で計算してひたすらに順次支払っていくという、そして支払う際には1本電話を入れお詫びをしてから稟議(支払い)に通すという、もう死ぬほど手間がかかることをある時期はずーっとしていたわけなのですね。数年先まで遡及して対応せねばならず、その量は膨大で、終わらない地獄のような日々でした。
いや、もちろん、契約者の側からみたら「そんなん当たり前やろ!」と言われてしまうことではあるのですが…その件数が比喩なんかではなく文字通り鬼のような量であったために、その時期にちょうど社員でいたことについてはもう…観念するしかないわけですけども…(いややはり正当化は良くないですね。黙ります笑)
他損保は割と体育会系だったり厳しいよなどと聞いていましたが、眠りのいた損保会社は「自由闊達(じゆうかったつ)」が信条で、上下関係はあれど比較的のんびりしたお坊ちゃんお嬢ちゃんが多いというか、ガツガツしたところはあまりない集団だったように思います。
そこにこの「保険金不払い問題」で目を血眼にして連日働いたことで、あ、ちなみにこれ通常業務に追加してやってましたから。なので業務量が尋常じゃなく、社員は当然のごとく皆、疲弊していました。しかし疲弊しようが何しようが上からは「関係ない。やれ」と言われるし、やらねば世間様から叩かれるし。とにかく、終わりの見えない目の前の業務をひたすらにこなすしかありませんでした。
こうして突如として会社の上層部が世間様を気にして動き始めたことで、CSを圧倒的優位にしてこの時期は会社の舵取りが行われたことになります。この時は当然、ESは後回しにされました。むしろ、ESはどこかに吹っ飛んでしまったかのように感じました。
そうして社内の雰囲気は「お客様第一!お客様のために!」ということで、明らかに「従業員無視」の風潮がこの会社にしては珍しく蔓延していくことになります。
これ、結果どうなったと思いますか。
従業員同士の挨拶、そして会話が激減したんです。みんな余裕が無くなってしまったんですね。
みんなが見ているのは「お客様」ばかりで、目の前の同僚(従業員)を見ることをしなくなりました。会社が従業員を後回しにする姿勢をあからさまに見せ始めたので、それに追随する形で、従業員もまた従業員を軽んじるような空気でいっぱいになりました。今思えば「余裕がなかっただけ」なのでしょうが、会話が減ったことで相互の関係性もまた薄れていったのは事実です。
そうこうしつつ怒涛の支払いによりなんとか「不払い問題」が収束を迎え、徐々にこのギスギスした空気は薄れてゆき、また元の「自由闊達」な、伸び伸びとした職場には戻ることはできたのですが、しかしその間数年間は本当に居心地の悪いものでした。同じ会社とは思えない、同僚と助けあうという雰囲気がほぼない、一人ぼっちで仕事をしているような気持ちでした。
この経験から眠りは、会社というのはまずはそこで働く従業員の満足度(ES)ありきで、そこをきちんと達成してからでないと良いサービスを顧客に対して提供することなんてできない。そう強く思うに至ったのです。これは今もそう思っています。それくらい強烈な体験でしたし、今となっては感謝すべき「袋叩き」だったなと思ってます。(これ、ほんと)
この眠りの持論を聞いた、頭の冴えた坊主氏は鼻でヘッと嗤(わら)って、そうして大きな声で自信満々にこうおっしゃいました。
「なーに言ってんの!CSですよ、絶対CS!それしかない。だって、お金を誰からいただいてるの?会社はどうして成り立ってんの?お客様がいるからでしょう???」
いや、確かにお客様がいてこその会社なんだけど…
すごい自信なので思わず反論する口調が押され気味となりました。
うーん、でもじゃあそこで働く従業員はその後ってことになる。じゃあ「お客様は神様です」って言いたいのかな。それって、従業員は納得するのかな。自分のところで働く従業員こそが会社にとって「絶対に必要な存在」である以上、優先度はまずそちらに軍配が上がるべきなんじゃないのかな。違うのかな。なんせ向こうはすげー自信満々だぞ…
結局は、ずーっと平行線のまま!でした。
いやもちろん、眠りだって「CSがどうでもいい」だなんて思ってはいませんよ。もちろん大事です、それも。無くていいとかなんて全く思ってません笑
だーけーどーも!
まーずーは!
従業員でしょ!!!!!
ってことなんですけどねえ?
坊主氏はというと、ESの視点についてはあまり重視していないように見えました。眠りは「両方大事、だけど優先順位はやっぱりESが先」というのに対し、「なんと言ってもCS。CSだけが大事。ES?それおいしーの?」みたいにESをどうでもいいように捉えているように聞こえたので、そこがどうしても合意に至らない決定打となったのでした。
坊主氏から見ても、どーでもいいと思っているESを、これ絶対やろ!と思っているCSより上位に置いている眠りについては「理解不能」であったのだろうと推察します。初対面でも「なんだこいつは」と思わせているのですが、意見を交わしてもなお、眠りは「なんだこいつは」と思わせてしまう悲しい存在ということになります。イケメンに好かれないのは非常に悲しいことです。
気がついたら目の前のコース料理はお互いとっくに食べ終えていましたが、それでもCS・ES論争だけは広がりっぱなしでこの日はとても片づきそうになく、一旦それでお開きとなりました。
しかし負けず嫌いの眠りは内心こう思っていました。
「よーし。これを兆円の人にぶつけてみよう。絶対に!眠りの味方をするはずだもの!だってESどうでもいいとかどう考えてもおかしいもんね!」
…狡い手です笑
なんという小物感!!
今こうして書いていても恥ずかしい、姑息なメンタルです自分!
恥ずかしいけどこれが素の姿なんですよね自分!
しかし眠り自身、ある面純粋にこの「CSとES、会社としてどちらが優先順位を高くすべきか」の正解を知りたくてたまりませんでしたので、絶対に聞いてスッキリしてやるぜ!と息巻いていたわけなのでした。
そうして後日。
「兆円の人」に満を辞して聞ける時がやってきました。
「…で!どう思います?やっぱりES優先ですよね!!?」
誘導尋問のごとく自分寄りにさりげなく誘導してしまうあたり、自分の小物ぶりが相変わらず全開となっており悲しいのですが、事実こういう聞き方をしたので正直に書いています笑
そうしたらなんと答えたと思いますか。
それはとてもとても、予想外なものでした。
「あー、、それはね、どっちも合ってる。二人とも間違ってないよ」
へっ??
いやいやいや!坊主こそ間違ってるって!!でしょ!!
もちろん理由を聞きます。
するとこう返ってきました。
「それは、立場が違うから答えが異なるだけで、両方ともそれぞれの立場からちゃんと正解を出してると思う。坊主は従業員の立場から考えてるからCS優先で正解だし、眠りは経営する側としての視点だからES優先で間違ってない」
そう、つまり、雇用される側(従業員)はお客様を見てCS優先で、雇用する側(雇う側)は従業員を見てES優先で、それでいい、ということなんですね。立場が異なるので見る対象も異なって当たり前、そしてそこで激論を交わしても平行線なのは当然だった、というわけなんですね。
鼻息も荒く、坊主氏のボスである「兆円の人」にこっそり意見をお伺いして坊主を床に沈めようとした(=負かそうとした)眠りです。なんとまあ、器の小さな輩なんでしょうか!自分でも恥ずかしさMAXです…坊主氏は今はもう日本へ本帰国なさっておりますが、もう勝ち負けの話ではないことに合点がいったので、鼻息を荒くすることもないと思います。
なんでもそうですが、見る角度が異なると見え方も違ってきます。眠りがよく例えに出すのは円柱です。真横から見たら長方形なのに、真上から見たら円なんですよね。四角か丸か。全く異なる図形に見えてしまうわけです。でも、同じ円柱なんですよね。
今回のニワトリが先かたまごが先か論争のような、CS・ES論争。「兆円の人」のひと声であっという間に眠りの中では解決してしまったわけですが、なんでも物事は多面的に見てこそ、理解や歩み寄りができることを学びました。喧嘩してるうちはね、視野が狭いってことなんですね笑
自戒を込めて、この話は終わりにしたいと思います。
◆本日の教訓
1. 多面的に捉えることで双方を理解できる
2. イケメンはサスペンダーが似合う
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