Kはなんで死んだ【詩】
その日は雨が降っていた。水たまりが靴下に染みるほど、なのに、なぜだか、乾いた、埃が喉に絡むような、変な空気だったんだ。と彼は言った。葬儀は公民館で行われた。
Kはなぜ死んだのか。
そう、とにかくよく分からない葬式だったんだ。
「公民館、古いからね。」
湿気も吸い込んでしまうほど、乾いた《色々なもの》が詰め込まれているんじゃない。雨も飲み干してしまうほど。とにかく乾いてる。
彼はイヤな顔で私を見た。そしてそんなことはどうでもよかったと気付いたように目を逸らす。
《いや私だって分かってる。》でも今は公民館の、水をごくごく、飲み込む歴史だけを見つめていたかった。目を逸らせば《まだ》濡れているようなKの死体が、花に埋められた死顔が、目を開け私の名前を呼びその冷たく固まった手で《また》私の輪郭を撫でるような。
そんな気がする。い ま も 。
礼服を緩める彼はなんだかセクシィだ。いつもの作業着もえっちだけど。私は葬式に行かなかった。
***
暑い夏の日だった。
BBQとアイコスの香り
の 川岸だ。
大きな山の蚊が、彼らの鍛えた、
焼けた肩にとまる時。
一つの肘がサッポロクロラベルをこぼした。川の大きな流れ。
みどり。
蚊の膨らんだ腹に溜まる血。
一人がトングを放り、
川へ 飛び込んだんだ。
掴んだ鰻が手をすり抜けるように
ちゅるんと、美しい、飛び込みだったんだ
蚊の膨らんだ腹に溜まる血。
ガシャガシャと蝉の煩い夏の日だった。
あいつ泳げたっけと一人二人が呟いた。
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