ハワイの夕暮れ 争奪戦
数日間、一人でハワイに滞在したことがある。
日本人の多いワイキキとはいえ、
右も左も分からない異国の地、たった一人の心細さ、中途半端な語学力…。
楽しい時間を過ごせるのか?
一番困るのは飲食の時間だったが、宿泊は、お手頃なコンドミニアムにしたのでキッチンも付いているから、近くのスーパーの食材で自炊もできる。
だから安心だった。
でも、与えられたこの試練を体験せずに、守りに入るのは如何なものか?
せっかくだから挑もうではないか!
こうして、私は果敢にレストランに予約の電話を入れ、堂々と(しているフリをして)おひとり様の夕食を過ごしたのだった。
さて、ワイキキといえば、サンセットが美しい。
夕食前の時間、ビーチ沿いのバーは盛況だった。
私もカクテルを飲みながら夕日を鑑賞しようと、ある店に行ってみた。
入口で、お店の人が案内してくれるのを待っていたが、全然こちらに来てくれない。
仕方なく、自分からお店の人のところに行って、話しかけると、
「空いているところ、どこでも!」とカタコトの日本語で返されたのだった。
忙しいから、自分で席を探せってことか?
しかもこちらは英語で話しているのに日本語で返すって馬鹿にしてる?
私は、日本的な感覚で案内してもらえるものと思っていたので、想定外の対応に、「日本人だから、差別されたのだろう」と思い、少し落ち込んでしまった。
そして空いている席もなかったため、その店をあとにしたのだった。
このまま部屋に帰るのは、よろしくない。
なんでもいいから、この気分を変えたい。
私は隣のバーに行ってみた。
こちらもお客さんでいっぱいな上、お店の人は案内してくれなかった。
ふと、私の後に来たアメリカ人らしき方が、勝手に空いている席を見つけて座り、注文を始めたので、私も真似をして席につき、なんとか落ち着くことができたのだった。
夕日はすっかり沈んでいたが…。
調べたところハワイでは、レストランと違い、バーでは自分で席を見つけて座るスタイルであることがわかった。
お店の人に差別されたわけではなかったのだ。
冷静に考えれば、日本語で返してきたのも、良かれと思っての行為なのだろう。
右も左も分からない異国の地、たった一人の心細さ、中途半端な語学力。
自信のなさから、ついつい被害妄想に陥ってしまいがちだ。
私は反省した。
気を取り直して、翌日も夕日の見えるバーに行ってみた。
でも自分で席を探すって、面倒くさいのだ。
大体いつも満席状態だから、席を立とうとしている人を見つけて、その席を取りに行くイメージだ。
うかうかしていると他の人に取られてしまう。
それに、ビーチ沿いのいい席が空くとは限らない。
実際、なかなかいい席を取ることはできなかった。
気力がないと、夕日の見えるバーに行くのが少し億劫になってしまう…。
でも落ち込んだり、躊躇している時間や労力がもったいない。
ひとりでも楽しんでみせる!
自分を奮い立たせ、何度かトライ。
そして学んだ。
バーについたら、戦闘モードに切り替えて、なんとしてもビーチ沿いの席を取りに行く!と決めるのだ。
数日後、夫と合流。
その頃には、夕日の見えるバーに行くと、なぜかビーチ沿いの席が空くタイミングに、運よく出くわすことが増えた。
何度かいい席に座ることができたのだ。
こうして、私はハワイの夕日を特等席で手に入れたのだった。
異国の地では守りに入っていては損だ!
欲しいものは自分で取りに行く!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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