夏目漱石と村上春樹(英語対訳)7 Natsume Soseki and Murakami Haruki (English translation)7
7 『こころ』と『ノルウェイの森』の類似性 (1)
漱石の『こころ』が現代作家に与えた影響をはっきりと確認できる作品の一つに村上春樹の『ノルウェイの森』を挙げることができる。 『こころ』と『ノルウェイの森』に類似点が散見されるので比較しみよう。
・『こころ』のあらすじ
「先生と私」:先生と私は鎌倉の海岸で知り合い、帰京してからも先生のお宅をたびたび尋ねるようになった。親しくなっても、先生には不思議な感じが消えないまま。先生を包む暗い影の正体を知るため、私は先生に過去を話してくれと頼んだところ「あなたは真面目ですか」と問うた上で、時が来たら話すと約束をした。
「両親と私」:大学を卒業した私が帰省すると、死の病を得た父のもとでしばらく過ごすことになった。なかなか上京できぬまま過ごしているうちに、先生からの遺書を受け取ることになり、危篤の父を残し先生のいる東京へ走った。
「先生の遺書」:若くして両親を亡くした先生は、信頼していた叔父に遺産を横領されて人間不信に陥り、故郷を捨てた。上京し、下宿した家の一人娘・静に惚れるが、告白できないでいた。しかし、援助するつもりで同居させた友人のKが先に静への恋心を先生に告白。それに動揺した先生は、Kを出し抜いて静との結婚を決めてしまった。Kは自殺した。結婚後も、その罪を感じ続けた先生は、明治の精神とともに殉死する決心をし、私へと遺書を書きました。
・『ノルウェイの森』のあらすじ
「僕とキズキと直子」:僕とキズキは高校の同級生でいつもつるんでいた。時々、キズキの彼女直子と三人で遊んでいた。ある日突然、キズキが自殺する。
「僕と直子」:僕は大学に入学し、思いがけず直子と東京で再会した。そして初めて直子の二十歳の誕生日に彼女と寝た。翌日彼女は姿を消し、しばらくして、今は京都の精神病の療養所に入っているという手紙が届く。
「僕と直子と緑」:同じ大学の緑と僕は付き合うようになった。僕の二十歳の誕生日の三日後、直子から手編みのセーターが届く。緑とは、直子への思いから一線を越えなかった。それからしばらくして直子は自殺した。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?