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夏目漱石と村上春樹(英語対訳)4          Natsume Soseki and Murakami Haruki (English translation)4

4 村上作品の特徴(平易な文章と難解な物語)(2)

(2)作品のストーリーはしばしば難解

 一方、文章の平易さに対して作品のストーリーはしばしば難解だとされています。村上自身はこの「物語の難解さ」について、「論理」ではなく「物語」としてテクストを理解するよう読者に促しています。物語中の理解しがたい出来事や現象を、村上は「激しい隠喩」とし、の深い部分の暗い領域を理解するためには、明るい領域の論理では不足だと説明しています。このような「平易な文体で高度な内容を取り扱い、現実世界から非現実の異界へとシームレスに(=つなぎ目なく)移動する」という作風は日本国内だけでなく海外にも「春樹チルドレン」と呼ばれ、村上の影響下にある作家たちを生んでいます。また、村上の作品は従来の日本文学と対比してしばしばアメリカ的・無国籍的とも評され、その世界的普遍性が高く評価されてもいますが、村上自身によると村上の小説はあくまで日本を舞台とした日本語の「日本文学」であり、無国籍な文学を志向しているわけではないという。なお村上が好んで使用するモチーフに「恋人や妻、友人の失踪」があり、長編、短編を問わず繰り返し用いられています。

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