夏目漱石と村上春樹(英語対訳)6 Natsume Soseki and Murakami Haruki (English translation)6
6 漱石と村上春樹の男女三角関係作品
村上春樹は、文体に強く惹かれた作家の具体例として、「僕が文体としてこれまで強く惹かれた人々を具体的にあげると、フィッツジェラルド、カポーテイー、チャンドラー、ブオネガツト、夏目漱石、その他いろいろあります」と述べています。そして、「僕は漱石って好きですが、『明暗』と『こころ』だけはどうしても好きになれません」(余裕やユーモアが感じられないから)と述べています。
漱石は約十年間で多くの男女三角関係小説を執筆しました。漱石の男女三角関係作品として、『虞美人草』(小野・藤尾・小夜子) 、 『三四郎』(三四郎・美禰子・野々宮)、『それから』(代助・三千代・平岡)、『門』(宗助・御米・安井)、『彼岸過迄』(須永・千代子・高木)、『行人』(一郎・二郎・直)、『こころ』(先生・お嬢さん(先生の奥さん)・K)、『明暗』(清子・津田・お延) があります。
一方、村上春樹も漱石の影響を受け男女三角関係作品を書いています。初期三部作(鼠三部作)と言われているものに、『風の歌を聴け』(一九七九:僕、鼠、小指のない女)、『一九七三年のピンボール』(一九八〇:僕、双子の女子 鼠)、 『羊をめぐる冒険』(一九八二:僕、妻、ガールフレンド、鼠)がある。他にも、『ノルウェイの森』(一九八七:僕、キズキ、直子、緑)、『スプートニクの恋人』(一九九九:僕、ミュウ、すみれ)、短編「蜂蜜パイ」(一九九九:淳平、小夜子、高槻)などがあります。
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